
不動産管理の業務は、入居者と契約に関わる「賃貸管理」、建物と設備を維持する「建物管理」、物件オーナーとの関係を支える「オーナー対応」の3つに大きく分けられます。
業務を効率化する基本は、情報を一か所にまとめること、毎月繰り返す定型業務を仕組みで処理すること、入居者やオーナーとのやり取りをデジタルに置き換えることの3点です。
管理戸数が増えるほど、紙やExcelを中心とした管理では、転記の手間や確認漏れが積み重なっていきます。
本記事では、不動産管理会社のご担当者さま向けに、管理業務の全体像と、業務ごとによくある課題と改善の方法を整理します。自社の業務を見直す際のチェックリストとしてもご活用ください。
不動産管理の業務内容
不動産管理(プロパティマネジメント)とは、物件オーナーに代わって賃貸物件の運営と維持を担う業務です。オーナーの資産価値と賃貸収入を保ちながら、入居者が安心して暮らせる状態を維持することが目的です。業務の範囲は広く、大きく次の3つに分けられます。
賃貸管理
入居者と賃貸借契約に関わる業務です。
入居前から退去後まで、一つの部屋に対して長い期間にわたって業務が続きます。
- 入居者募集:空室情報の掲載、内見対応、仲介会社との連携
- 入居審査・契約:申込受付、入居審査、重要事項説明、契約書の作成と締結
- 家賃管理:入金確認(消込)、滞納者への督促、オーナーへの送金
- 更新業務:更新時期の把握、更新案内の送付、更新契約の締結
- 入居者対応:問い合わせ、設備の不具合やクレームへの対応
- 退去・解約:解約受付、退去立会い、敷金精算、原状回復の手配
建物管理
建物と設備の状態を保ち、資産価値の低下を防ぐ業務です。入居者の満足度や、次の入居者募集のしやすさにも直結します。
- 共用部の日常清掃・定期清掃
- 法定点検・定期点検(消防設備、給水設備、エレベーターなど)
- 修繕や設備交換の手配と工事の進捗管理
- 長期修繕計画の作成と見直し
オーナー対応
物件オーナーとの信頼関係を支える業務です。
管理会社にとっては、管理委託を継続してもらうための重要な接点でもあります。
- 収支報告書・送金明細の作成と送付
- 修繕や募集条件の変更についての提案と承認の取得
- 管理業務の実施状況の定期報告
2021年6月15日に全面施行された賃貸住宅管理業法(賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律)では、管理戸数200戸以上の事業者に国土交通大臣への登録が義務づけられました。
登録事業者には、営業所ごとの業務管理者の配置や家賃等の分別管理に加え、業務の実施状況をオーナーに定期的に報告することも求められています(出典:国土交通省「賃貸住宅管理業法ポータルサイト 制度解説」)。
オーナー対応は関係づくりのためだけでなく、法令にもとづく業務でもあります。
管理業務が非効率になりやすい理由
管理業務の負担が増えやすいのは、業務の種類が多く、関わる人が多く、同じ情報を何度も扱う構造になっているためです。
とくに次の4つが、時間がかかる原因になりやすいポイントです。
情報が分散している
物件情報、契約情報、入金情報、修繕履歴が、Excel、紙の台帳、メール、担当者の手元のメモにばらばらに保管されていると、確認や転記のたびに時間がかかります。
同じ情報を複数の場所に書き写すたびに、入力ミスが入り込む余地も生まれます。
関係者が多く、連絡の往復が多い
1件の修繕でも、入居者からの連絡受付、業者への手配、オーナーへの承認依頼、完了報告と、複数の相手とのやり取りが発生します。
電話・FAX・郵送が中心だと、連絡の行き違いや「言った・言わない」のトラブルが起きやすくなります。
定型業務が手作業で残っている
毎月の入金消込、更新対象者の抽出、送金明細の作成などは、毎回同じ手順を繰り返す業務です。
管理戸数が少ないうちは手作業でも回りますが、戸数が増えるほど作業量はほぼ比例して増えていきます。
業務が属人化している
特定の担当者だけが対応履歴やオーナーごとの取り決めを把握していると、休暇や異動のたびに業務が止まります。
引き継ぎにも時間がかかり、対応品質にもばらつきが出やすくなります。
業務別:よくある課題と効率化の方法
業務ごとに、よくある課題と効率化の方法を整理しました。自社でとくに時間がかかっている業務から確認してみてください。
| 業務 | よくある課題 | 効率化の方法 |
|---|---|---|
| 入居者募集 | 複数のポータルサイトへの登録・更新に手間がかかる | 物件情報を一度登録すれば複数の媒体や自社サイトに反映できる仕組みを使う |
| 契約 | 書類の作成と郵送のやり取りに日数がかかる | 契約書類のテンプレート化と電子契約の活用 |
| 家賃管理(入金消込) | 振込名義の表記ゆれで照合に時間がかかる | 入金データの取り込みと照合の自動化、AIによる照合候補の提示 |
| 滞納対応 | 滞納の把握が遅れ、督促が後手に回る | 入金状況の一覧化と、督促の基準・手順の標準化 |
| 更新業務 | 更新時期の見落としや案内の出し遅れ | 更新対象者の自動抽出と、期日前の通知 |
| 入居者対応 | 電話が集中し、対応履歴が残らない | 入居者アプリやWeb受付で窓口を一本化し、履歴を記録する |
| 修繕・建物管理 | 業者手配と進捗確認の連絡が多い | 依頼・見積・完了報告を案件ごとに一元管理する |
| オーナー報告 | 収支報告書の作成と郵送に毎月時間がかかる | 送金明細の自動作成と、オーナーアプリでのオンライン共有 |
| 退去・原状回復 | 精算額の計算と説明に手間がかかる | 精算書のテンプレート化と、入居時・退去時の記録のデジタル化 |
家賃管理:入金消込は件数に比例して負担が増える
表の中でも、管理戸数に比例して負担が増えやすいのが家賃の入金消込です。振込名義は「カ)」「(カ」のような法人格の表記の違いや、カナ・英字の混在、家族名義での振込などで、契約者名と一致しないことが少なくありません。
そのため、通帳や入金明細を目で見て、該当する契約を一件ずつ探す作業が残りがちです。
入金データをシステムに取り込み、金額や名義から自動で照合する仕組みを使えば、人が確認するのは一致しなかった入金だけになります。
最近は、表記ゆれを含めてAIが照合候補を提示する機能も登場しています。
オーナー報告:紙の郵送からオンライン共有へ
毎月の収支報告書や送金明細の作成・印刷・郵送は、オーナー数が多いほど大きな負担になります。
システムで帳票を自動作成し、オーナー向けのアプリやWebページで共有する方法に切り替えれば、郵送の手間とコストを減らせます。
オーナーにとっても、スマートフォンでいつでも報告内容を確認できるようになります。
入居者対応:窓口を一本化して履歴を残す
入居者からの問い合わせが電話に集中すると、担当者の時間が細切れになり、対応内容も記録に残りにくくなります。
入居者アプリやWeb受付で窓口をまとめ、よくある質問への回答を用意しておけば、問い合わせの件数そのものを減らせます。
対応履歴が残るため、担当者が替わっても経緯を確認できます。
効率化を進める手順
効率化は、ツールを選ぶところから始めるとうまくいきにくくなります。まず自社の業務を見える化し、効果の大きいところから順に手をつけるのが近道です。
- 現状の業務を洗い出す 業務ごとに、月あたりの件数、1件あたりの作業時間、担当者を書き出します。「入金消込に毎月何時間かかっているか」のように数字で把握すると、改善の優先順位を判断しやすくなります。
- 課題に優先順位をつける 「件数×作業時間」が大きい業務と、ミスが起きたときの影響が大きい業務(入金、契約、更新など)を優先します。全部を一度に変えようとせず、まず1〜2業務に絞ります。
- 業務フローを整理してからツールを選ぶ 今の手順をそのままシステムに載せると、非効率な手順まで残ってしまいます。不要な確認や二重入力をなくした後のフローを描いてから、それに合うツールを選びます。
- 小さく始めて定着させる 一部の店舗や業務から導入し、操作手順やルールを社内で共有します。入居者やオーナーに使ってもらう仕組みは、案内の方法まで含めて準備しておくと定着が早まります。
- 効果を測って見直す 導入前に洗い出した作業時間と比べて、どれだけ減ったかを確認します。効果が出た業務の進め方を、次の業務の改善にも横展開していきます。
システム化で押さえるポイント
管理業務の効率化には、賃貸管理システムの活用が欠かせません。
システムを検討する際は、機能の多さよりも「自社の業務と運用に合うか」を軸に確認することが大切です。
- 自社の業務範囲に合っているか:管理専業か、仲介も行うか、売買も扱うかによって、必要な機能は変わります。必要な機能から選んで組み合わせられるかも確認しましょう。
- 情報を一元管理できるか:物件・契約・入金・修繕履歴・オーナー情報が一つのデータとしてつながっているかで、二重入力の有無が決まります。会計ソフトや銀行データとの連携も確認ポイントです。
- 法改正に継続して対応しているか:賃貸住宅管理業法、電子契約に関わる宅地建物取引業法の改正、インボイス制度など、管理業務は制度変更の影響を受けやすい領域です。クラウド型で継続的にアップデートされるかを確認しましょう。
- 入居者・オーナーとの接点があるか:入居者アプリやオーナーアプリと連携できると、連絡や報告のやり取りまで含めて効率化できます。
- セキュリティ体制は十分か:入居者やオーナーの個人情報、口座情報を扱うため、情報セキュリティの国際認証の取得状況なども判断材料になります。
- 導入時の支援とサポートがあるか:既存データの移行支援や、導入後の問い合わせ窓口の有無を確認しておくと安心です。
賃貸管理システムの種類や比較のポイントは、賃貸管理システムの選び方で詳しく解説しています。
AIで変わる管理業務
生成AIの登場により、これまで人の判断や文章作成が必要だった業務の一部も、システムで支援できるようになってきました。たとえば次のような活用が考えられます。
- 入金消込で、表記ゆれを含めて照合すべき契約の候補を提示する
- オーナーへの報告や連絡の文面を、下書きから丁寧な文章に整える
- 入居者からの問い合わせに対する返信文の案を作成する
いずれも、AIが最終判断をするのではなく、担当者の確認作業や文章作成の手間を減らす「支援」の位置づけです。最終的な確認は人が行うことで、正確さを保ちながら作業時間を短縮できます。
いい生活では、いい生活賃貸管理クラウドの「AI入金消込アシスト機能」に加え、いい生活Ownerでオーナー向けメッセージの作成を支援する「AI清書機能」を正式リリースしています。
業務フローのどこにAIが効くのかは、不動産業務のどこにAIが効くのか?いい生活が実装する業務フロー全体像で紹介しています。
よくある質問
Q. 不動産管理の主な業務内容は何ですか?
A. 入居者募集・契約・家賃管理・更新・退去精算などの「賃貸管理」、清掃・点検・修繕などの「建物管理」、収支報告や提案などの「オーナー対応」の3つに大きく分けられます。
A. 賃貸管理は入居者と賃貸借契約に関わる業務、建物管理は建物や設備の状態を保つ業務です。管理会社によっては両方を担う場合も、建物管理を専門の会社に委託する場合もあります。
A. まず業務ごとの件数と作業時間を洗い出し、「件数×時間」が大きい業務から手をつけるのが効果的です。入金消込、更新業務、オーナーへの収支報告は、管理戸数に比例して負担が増えやすいため、優先度が高くなりやすい業務です。
A. 入金データをシステムに取り込み、金額や振込名義から自動で照合する方法があります。表記ゆれでも照合候補をAIが提示する機能を使えば、目視で確認する件数をさらに減らせます。
A. 収支報告書や送金明細をシステムで自動作成し、オーナー向けアプリなどでオンライン共有する方法があります。印刷と郵送の手間が減り、オーナーもスマートフォンで報告内容を確認できます。
まとめ
不動産管理の業務は、賃貸管理・建物管理・オーナー対応と幅が広く、関わる人も多いため、情報の分散や手作業の積み重ねで負担が大きくなりがちです。効率化の第一歩は、業務ごとの件数と作業時間を把握し、負担の大きい業務から優先して見直すことです。
そのうえで、情報の一元管理、定型業務の自動化、入居者・オーナーとのやり取りのデジタル化を進めれば、少ない人数でも多くの物件を安定して管理できるようになります。AIによる支援も広がりつつあるため、自社の業務フローのどこに取り入れられるかを検討してみてください。
・監修者ご紹介

株式会社いい生活 代表取締役副社長 COO
北澤弘貴
不動産業界のIT戦略を牽引するキーパーソン
株式会社いい生活の代表取締役副社長 COOを務める北澤は、不動産業界におけるIT戦略の推進者として、全国の不動産会社から支持をいただいております。おなじみの「無駄を省くIT戦略」に関する講演を全国各地で行い、多くの企業が業務効率化と生産性向上を実現できるよう支援しています。
その知見は、単にITツールを導入するだけでなく、いかにしてそれを最大限に活用し、ビジネスの成果に結びつけるかという視点から提供されており、高い評価をいただいております。
また、以下の要職を兼任しており、不動産業界、特に賃貸住宅管理と不動産テック分野において極めて重要な役割を担っています。
(公益)日本賃貸住宅管理協会 理事
(公益)日本賃貸住宅管理協会 東京都支部上席幹事
(公益)日本賃貸住宅管理協会 IT・シェアリング推進事業者協議会 副会長
(社)不動産テック協会 顧問
これらの役職からもわかるように、北澤は業界団体の中枢で、不動産DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進や、新たなテクノロジーの活用による業界全体の発展に大きく貢献しています。
彼の講演や発信する情報は、不動産業界の未来を考える上で不可欠な示唆に富んでいると言えるでしょう。

株式会社いい生活 執行役員 セールス&マーケティンググループ/マーケティング本部 本部長
飯島博昭
20年超の経験が裏打ちする賃貸管理システム営業の第一人者
賃貸管理システム業界において20年以上のキャリアを持つスペシャリストです。
2004年4月に株式会社ビジュアルリサーチに入社以来、2018年1月までの約14年間、同社で賃貸管理システムの営業に従事。その後、2018年2月からは株式会社いい生活に入社し、現在に至るまでその専門知識と経験を活かしています。
20年以上にわたり最前線で賃貸管理システムを販売し続けてきており、単なる知識だけではない、長年の経験に裏打ちされた圧倒的な説得力と深みがあります。
賃貸管理の現場を熟知し、数多くの企業を支援してきたからこそ語れる、実践的かつ本質的な洞察は、読者の皆様に確かな信頼と納得感をもたらすでしょう。
彼の知見は、賃貸管理システムの導入を検討している企業にとって、あるいは業界の動向に関心のある方にとって、非常に価値のある情報源となるはずです。
・執筆者

株式会社いい生活 マーケティング本部
マーケティング部
広報部
全国の不動産市場向けイベント、セミナーなどにて不動産市場におけるAI活用やセキュリティ対策についてなど多数登壇、皆様のお役に立つ最新情報を発信しております。