
ここ数週間、当社では多くの不動産会社の皆さまとお話しする機会をいただきました。
その中で、強い懸念を覚えたことがあります。
「どうせ何をやっても情報は漏れる」
「漏れたら、その時に対応するしかない」
こうした声を、少なからず耳にしました。しかしこの考え方には、大きな見落としがあります。
個人情報の漏洩とシステムの停止は、別々のリスクではなく、同じ一つの事件として起こるということです。
①被害は過去最多の水準に※
警察庁が2026年9月に公表した統計によると、2026年上半期のランサムウェア被害の報告件数は123件で、半期としては統計開始以来最多となりました。
被害企業の約6割は中小企業です。業種別では製造業が最も多いものの、不動産業・物品賃貸業も上位に入っています。
「大企業が狙われるもの」「うちの業界には関係ない」とは、もはや言えない状況です。
②【重要】漏洩と停止は、同時に起きる
現在の情報漏洩の多くは、次のような流れで発生します。
- VPN機器の脆弱性や、漏れたID・パスワードなどを突かれ、社内ネットワークに侵入される
- データが盗み出された上で、ランサムウェアによって暗号化され、システムが使えなくなる
- 攻撃者から金銭を要求するメッセージが届く
- 要求に応じなければ、盗まれた個人情報がダークウェブ上で公開・売買される
警察庁によれば、近年の被害の多くは、このように「データの暗号化」と「盗んだデータの公開予告」を組み合わせた二重恐喝の手口です。
つまり、「個人情報が漏れた」と判明した時点で、業務システムはすでに停止している可能性が高いのです。
さらに、一度侵入されたシステムは、たとえ動いているように見えても使い続けてはいけません。調査が完了し、端末・サーバー・通信環境の入れ替えや再構築が終わるまで、通常業務には戻れません。
同統計のアンケートでは、被害組織の約6割が復旧に総額1,000万円以上を要しています。また、1か月未満で復旧できた組織は全体の5割に届いていません。
③報道では見えにくい「もう一つの被害」
テレビや新聞の報道は、どうしても「個人情報漏洩」の側面に集中します。そのため、情報漏洩は「お詫びと信用回復の問題」と捉えられがちです。
しかし実際の現場では、それと同時に「業務がまったく回らない」という事態が起きています。
- 個人情報漏洩は、目先の信用問題であり、長期にわたる犯罪被害への不安
- システム停止は、今日からのビジネス停止
この二つが、同時に押し寄せるのです。
④【重要】不動産業界は、これから最も大切な時期へ
不動産業界は2027年の繁忙期を前にシステムが止まれば、業務のほぼすべてが止まります。
物件情報の確認・更新、お客さまへのご案内、契約・重要事項説明、入金管理や管理業務も例外ではありません。
復旧まで1か月以上かかれば、繁忙期そのものを失いかねません。失われるのは情報だけではありません。
一年で最も重要な時期の売上と、お客さまからの信頼そのものです。
⑤今、確認していただきたいこと
「どうせ漏れる」と諦めるのではなく、「止まらない、止まってもすぐ戻せる」体制づくりが重要です。まずは次の点をご確認ください。
- ルーター・VPN機器、パソコン、サーバーのソフトウェアが最新の状態に保たれているか
- 推測されにくいパスワードを設定し、多要素認証を導入しているか
- バックアップを、普段使うネットワークから切り離された場所にも保管しているか
- 万一の際の連絡先・復旧手順・業務継続の方法が社内で決まっているか
- 不審なメールや添付ファイルへの対応を、従業員に周知できているか
⑥最後に
当然ですが、情報漏洩は「漏れたら謝れば済む」問題ではありません。
さらに「漏れたとき、会社は止まっている」このことも大きな問題です。
繁忙期を安心して迎えるために、この機会にぜひ社内の体制をご確認ください。
ご不明な点やご相談がございましたら、お気軽にお問い合わせください。
※出典:警察庁「令和8年上半期におけるサイバー空間をめぐる脅威の情勢等について」2026年9月