
物件写真の印象を大きく変える「バーチャルホームステージング」。
空室写真にCGで家具やインテリアを合成し、実際の暮らしをイメージさせる手法として注目が高まっています。家具のレンタルや搬入を行う従来のホームステージングに比べて、コストを抑えつつ短期間で高品質なビジュアルを作成できるのが特徴です。
この記事では、バーチャルホームステージングの基本から導入の流れ、効果的な活用法までを詳しく解説します。反響率アップや成約率向上につながる運用のポイントを押さえ、集客力・成約率の向上を実現しましょう。
バーチャルホームステージングとは?

バーチャルホームステージングは、室内写真にCGで家具やインテリアを合成し、生活イメージを視覚的に伝える手法です。
従来のホームステージングと比べて、家具のレンタルや搬入が不要なため、費用をおよそ1/10~1/20程度に抑えられます。写真さえあれば短期間で制作でき、ポータルサイトやSNSでの反響アップにも効果的です。
ここでは、そんなバーチャルホームステージングの仕組みや特徴を、従来のホームステージングとの違いを踏まえて解説します。
そもそもホームステージングとは?
ホームステージングとは、家具や小物を実際に設置して、生活空間を演出する手法です。
欧米では不動産売却時の一般的な手法として定着しており、日本でも中古住宅や賃貸物件の早期成約を目的に導入が広がっています。生活イメージを具体的に伝えることで購買意欲を高め、写真や内見時の印象を向上させる効果があります。
その一方で、家具の調達や設置・撤去に手間やコストがかかる点が課題とされてきました。そこで近年注目されているのが、デジタル技術を活用した「バーチャルホームステージング」です。
バーチャルホームステージングのメリット・デメリット
バーチャルホームステージングは、空室写真にCGで家具やインテリアを合成し、実際の生活イメージを演出する手法です。
実際に家具を搬入・設置する必要がないため、コストを抑えながら多彩なインテリアデザインを表現できます。
また、ターゲット層に合わせて家具や小物を自由に差し替えられるため、ファミリー層や単身者などのライフスタイルに合わせた細やかな訴求が可能です。写真の印象を高めることで、ポータルサイトやSNSでの反響率向上にもつながりやすくなります。
一方で、実際の家具が設置されていないため、内見時に「写真と印象が違う」と感じられる場合があります。また、CGの質が低いと光や影の表現が不自然になり、かえって信頼を損ねる可能性にも注意が必要です。さらに、修正依頼や再レンダリングに時間を要するケースもあり、制作工程を外注する場合は納期管理が課題となることもあります。
バーチャルホームステージング導入の効果

バーチャルホームステージングの導入は、単に写真を魅力的に見せるだけではありません。
設営や撮影にかかるコストを抑えながら、物件の反響率を高め、問い合わせから成約までのスピードを向上させるなど、販売・募集活動全体に多面的な効果をもたらします。
ここでは、導入によって得られる主な4つの効果を具体的に見ていきましょう。
導入コストの抑制
モデルルームやオープンハウスでは、家具やインテリアを実際に搬入して設営するため、高額なレンタル費や人件費が発生します。一方、バーチャルホームステージングは、空室写真にCGで家具や小物を合成するだけで、現地での設営を行わずに同等の生活空間を演出できます。
一般的な費用は、1画像あたり約1万円前後が目安で、フルCG制作の場合でも数万円から十数万円程度。従来のホームステージングに比べておよそ1/10〜1/20のコストで実施できると言われています。
家具の搬入・撤去費や運搬コストが不要なうえ、撮影のための人件費も抑えられるため、限られた広告予算でも多くの物件を対象にステージングが可能です。
反響率の向上
バーチャルホームステージングを導入すると、物件写真の印象が大きく変わり、閲覧者の目に留まりやすくなります。
家具やインテリアを合成した写真は、空室写真より明るく立体的に見えます。そのため、不動産ポータルサイトの一覧画面の中で他の物件よりも目に留まりやすくなり、クリック率を高めることが可能です。
さらに、家具の配置や採光のイメージを提示できることで「どんな暮らしができるか」を具体的に伝えられる点もポイントです。これは、間取り図や空室写真だけでは表現できない価値ある情報となるため、同条件の物件が並ぶ中で競合との差別化につなげられます。
検討期間の短縮
問い合わせ後の検討段階でも、バーチャルホームステージングは大きな効果を発揮します。
画像上で家具やカラー、インテリアのテイストなどを自由に差し替えられるため、入居希望者の好みに合わせた複数パターンの室内を短時間で提示できます。
こうした柔軟な提案は、実際に家具を設置する従来のホームステージングでは難しく、バーチャルホームステージングならではの利点です。ナチュラル・モダン・北欧スタイルなど、異なるインテリアを比較しながら検討できることで、入居希望者は自分に合う暮らし方をすぐに見つけられます。
結果として、内見や商談を重ねて判断する手間が減り、問い合わせから成約までの期間を短縮させることができます。
営業活動の効率化
バーチャルホームステージングを導入すれば、入居希望者がオンラインで物件の雰囲気や間取りを把握しやすくなります。そのため、実際に物件を内見するかどうかを事前に判断できるようになるでしょう。
結果として営業担当者は、現地案内に必要な鍵の手配や清掃、移動などの準備作業を省けます。省いた時間を活用して、顧客の要望整理や条件提案、入居後のフォローなど、一歩踏み込んだ提案型の接客に注力することが可能です。
バーチャルホームステージングは、営業活動の効率化を促しながら、顧客満足度や成約率の向上にもつなげられる施策といえるでしょう。
バーチャルホームステージング導入の流れ

バーチャルホームステージングは手軽に始めることができる施策です。その一方で、仕上がりのクオリティや集客効果を左右する重要なポイントを押さえておかないと、十分な成果が得られません。
導入の流れを理解しておくことで、現場での準備から制作、公開までをスムーズに進め、より大きな効果を引き出せます。
ここでは、写真撮影から広告展開までの4つのステップを順を追ってご紹介します。
①画像データを用意する
まずは、バーチャルホームステージングのもととなる空室写真を準備します。
画像の撮影時は、明るさや構図が仕上がりのクオリティを大きく左右するため、日中の自然光を取り入れ、家具を配置した際に広く見える角度から撮影することが大切です。カーテンを開けて奥行きを出し、床や壁のラインが歪まないようにカメラを水平に保つと、後の合成で違和感のないリアルな仕上がりになります。
また、高画質のデータを用意することも大切です。素材の質感や光の表現がより自然に再現され、完成画像の印象を大きく高めることができます。
②バーチャル画像の制作を開始
撮影した写真をもとに、専門業者へ依頼するか、自社内で制作環境を整えて進めます。
外部サービスを利用する場合は、短納期で高品質な合成が可能で、複数パターンのデザイン提案にも柔軟に対応できます。外注先を選定する際は、制作実績やサンプル画像を確認し、クオリティを見極めることが重要です。さらに、ターゲットとなる入居者層や物件の特徴を踏まえてスタイリングの方向性を共有すれば、訴求力の高い仕上がりが期待できます。
一方、自社で制作を行う場合はコストを抑えやすい反面、専門的な技術や設備が必要となり、再現度に差が出ることもあります。目的や物件の特性に合わせて、外注と内製のどちらが適しているかを見極めることが大切です。
③仕上がりを確認する
完成したバーチャル画像は、実際の物件情報として掲載する前に、必ず現地の印象と合っているかを確認しましょう。
家具の配置や配色、採光の表現が実際の間取りや雰囲気と乖離していると、内見時に「写真と印象が違う」と感じさせてしまう原因になります。
制作会社によっては、光や素材の再現精度に差が出ることもあるため、必要に応じて修正を依頼し、リアルな印象に近づけておくことが大切です。
最終調整が済んだ画像をポータルサイトや自社ホームページに掲載すれば、視覚的な訴求力が高まり、信頼性のある情報発信につなげることができます。
④広告媒体やホームページで展開
完成した画像は、不動産ポータルサイトへの掲載だけでなく、自社ホームページやSNS広告、メール配信など、複数のチャネルで活用しましょう。静止画だけでなく、VRや動画と組み合わせることで、物件の魅力をより立体的に伝えることができます。
その一方で、バーチャルホームステージングの効果を十分に引き出すには、画像データの管理や媒体掲載をスムーズに行える体制づくりも大切です。
画像の更新や差し替えを適切に行わなければ、閲覧者に最新で正確な情報を提供できず、信頼を損ねるおそれがあります。掲載内容の信頼性が低下すれば、問い合わせや成約の機会を逃すことにもなりかねません。
不動産賃貸・売買業務のデジタル化を支援するサービス『いい生活賃貸クラウド One』、『いい生活売買クラウド One』は、いずれも複数枚の画像をドラッグ&ドロップで簡単に登録することが可能。画像の自動圧縮や透かし(ウォーターマーク)の付与にも対応しています。ポータルサイトへの一括掲載にも対応しているため、作業負担を抑えながら、統一感のある情報発信を行うことができます。
バーチャルホームステージング活用のポイント

バーチャルホームステージングを効果的に活用するには、見た目の演出だけでなく、ターゲットや物件特性を踏まえた戦略的な設計と、正確で誠実な情報発信が欠かせません。
ターゲットに合わせた空間づくりや、法令・倫理面に配慮した運用を意識することで、閲覧者の共感と信頼を高め、成果につなげることができます。
ここでは、バーチャルホームステージングを活用するのにあたって押さえておきたいポイントを紹介します。
ターゲットに合わせたコーディネート
バーチャルホームステージングでは、ターゲット層に合わせて空間演出を変えることが重要です。
リアルのホームステージングでも同様の工夫は行われますが、バーチャルであればデータ上で複数パターンを手軽に試せるため、より柔軟にターゲットごとの最適な演出を行うことができます。
この特性を活かすためには、想定する入居者像を明確にすることが大切です。たとえば、ファミリー層であれば、子ども部屋や家族団らんを想起させるリビングを中心に構成する。単身者や学生向けなら、限られた空間を広く見せる配置や、明るい色味で開放感を演出するといったことが考えられます。
さらに、エリア特性や家賃帯、間取りなども踏まえてコーディネートを調整すると効果的です。たとえば都心の高級マンションでは上質感を強調し、郊外の戸建てでは庭のある暮らしを想像させる構成にするなど、物件の強みを最大限に引き出すスタイリングが求められます。
こうしたターゲットに即した演出は、単なるデザインではなく、「誰に・どんな暮らしを届けるか」を明確にすることが可能です。これにより、閲覧者の共感を高め、成約率の向上につなげることができます。
法律・倫理面の注意点
バーチャルホームステージングは、物件の魅力を引き出す効果的な手法ですが、CG加工による表現は誤解を招くおそれがあります。
宅地建物取引業法、景品表示法、不動産の表示に関する公正競争規約などの対象となるため、誇大広告や虚偽表示とみなされないよう注意が必要です。
特に、実際には存在しない設備を追加したり、搬入が難しい大型家具を配置したりする表現は、優良誤認につながるリスクがあります。また、広角撮影や明るさ補正などの加工によって、実際よりも広く・明るく見せることも、景表法上の問題となる場合があります。
そのため、バーチャルホームステージングはあくまでも「生活イメージを補助するための手法」として運用することが重要です。実際の印象との乖離が生じないよう、誠実な情報提供を心がけましょう。
実務上の対応策
合成画像を掲載する際は「CGによる合成画像であること」や「あくまでイメージであること」を明記する必要があります。この表記を怠ると、閲覧者が現況と誤解し、誇大広告や虚偽表示とみなしてしまうかもしれません。
また、加工前の空室写真をあわせて掲載することで、閲覧者が実際の状態を正しく理解しやすくなります。照明や色味の補正は、現場の自然光に近いトーンで仕上げ、現実に存在しない印象を与えないようにすることが望ましいです。
これらの運用ルールを社内で明文化し、担当者それぞれが共通認識を持つことで、法令遵守と信頼性を両立した運用が可能になります。
バーチャルホームステージングで集客力と成約率を高めよう

バーチャルホームステージングは従来のホームステージングに比べて手軽に導入でき、物件の魅力を低コストで最大限に引き出せる手法です。空室写真を活用して生活イメージを演出することで、反響率の向上や検討期間の短縮、営業活動の効率化などにつながります。
バーチャルホームステージングの効果を十分に発揮させるためには、画像の管理や媒体掲載をスムーズに行える仕組みづくりが欠かせません。適切な画像管理と情報発信により、最新かつ正確な情報を提供することで閲覧者からの信頼を高め、問い合わせや成約へとつなげることができます。
『いい生活賃貸クラウド One』や『いい生活売買クラウド One』のように、画像の管理・運用がしやすい営業支援ツールを活用すれば、運用負担を抑えながら質の高い情報発信を継続できます。バーチャルホームステージングとデジタルツールを組み合わせることで、より効果的な物件訴求と成約率の向上を実現しましょう。
・執筆者

株式会社いい生活 マーケティング本部
マーケティング部
広報部
全国の不動産市場向けイベント、セミナーなどにて多数登壇、皆様のお役に立つ最新情報を発信しております。