不動産会社を経営するには、開業までの流れを把握しておく必要があります。営業保証金の供託が必要になるなど、一般的な法人の設立とは異なる部分があるため、事前に確認しておくことが大切です。
そこで今回は、不動産会社の経営で必要となる開業までの流れや補助金・助成金の情報などをご紹介し、会社を立ち上げたあとにやるべきことや不動産経営を効率化するコツも詳しく解説します。
不動産会社を経営するには?開業までの流れとは
不動産会社には、「管理会社」や「仲介会社」「販売代理会社」などがありますが、基本的に開業までの流れはほとんど同じです。開業までの主な流れは次の通りです。
- 会社の形態を決める
- 業務形態を決める
- 事業計画を策定する
- 事務所を設置する
- 会社を立ち上げる
- 必要な資格を取得する
- 協会に加入する
順に詳しく解説します。
会社の形態を決める
不動産会社を開業する際、最初に決めるべきは会社の形態です。主な不動産会社の形態は次の通りです。
- 株式会社
- 合同会社
- 個人事業主
株式会社は合同会社と違い、会社の所有者は株主(出資者)となります。幅広い資金調達が可能であり、一般的に合同会社より信用度が高いとされているのが特徴です。一方で、設立費用が合同会社より高く、決算公告が必要になるなど維持の手間がかかってしまいます。
合同会社は出資者が所有者となり、その出資者が社員となっています。設立費用が株式会社より安く、取締役や株主総会などの設置要件がないため、より柔軟な経営が可能です。ただし、あまり認知されておらず信用度が株式会社より低くなる傾向にあり、株式の増資による資金調達の手段はありません。
個人事業主の場合、株式会社や合同会社よりも設立費用がかからず、スピーディーに開業できます。その反面、法人よりも経費にできるものが限られていたり、社会的な信用が得られない可能性があったりするでしょう。
業務形態を決める
不動産会社は、一般的に4つの種類があります。
- 開発会社(デベロッパー)
- 販売代理会社
- 仲介会社
- 管理会社
開発会社は、土地を取得したうえで開発や分譲を行い、大きな街づくりを推進します。販売代理会社は開発会社に代わって不動産の販売を行い、仲介会社は不動産の売買や賃貸を仲介するのです。管理会社は集合住宅を賃貸する際の、入居者や建物の管理業務を行います。
業種によって必要な知識や資格、業務内容が異なります。そのため、開業する際は事前のリサーチと、早めに業務形態を決めておくことが大切です。
事業計画を策定する
次に、事業の目標や戦略、財務計画などを明確にした事業計画書を作成します。事業計画書は、事業の目的や戦略、市場分析や財務計画などをまとめた文書であり、事業の成功に向けたロードマップの役割を果たすものです。また、資金調達や事業への支援者・協力者募集の際に必要なものでもあります。
事業計画を立てておかなければ方向性が不明確になったり、資金の調達が困難になったりするなど、さまざまなリスクが発生します。結果として事業を成功させることが難しくなってしまう可能性もあるでしょう。
市場分析や競合分析を行い、どのように収益を上げるか、どのように市場に参入するかなどを具体的に計画し、明文化しておきましょう。
事務所を設置する
不動産業を経営するためには、実際に事務所を構える必要があります。
宅地建物取引業法によると、宅地建物取引業を営む場合は業態の規模によって国土交通大臣か都道府県知事の免許が必要となりますが、免許申請の際に事務所の名称と所在地を申告することが求められます。
第三条 宅地建物取引業を営もうとする者は、二以上の都道府県の区域内に事務所(本店、支店その他の政令で定めるものをいう。以下同じ。)を設置してその事業を営もうとする場合にあつては国土交通大臣の、一の都道府県の区域内にのみ事務所を設置してその事業を営もうとする場合にあつては当該事務所の所在地を管轄する都道府県知事の免許を受けなければならない。 出典:e-GOV|宅地建物取引業法(昭和二十七年法律第百七十六号) |
事務所の立地は、ターゲット層がいる地域や、活発な商業地域であることやアクセスの良さを考慮して選ぶとよいでしょう。
しかし、自宅を事務所として使用する場合は次の条件があります。
- 玄関から他の部屋を通らず事務所へ行ける
- 生活部分と事務所が壁などで明確に分かれている
- 事務所としての形態が整えられており、かつ事務所としてのみ使用している
- 集合住宅の場合は事務所としての使用を認められている
※参考:事務所の開設 | 公益社団法人 神奈川県宅地建物取引業協会
自宅にするか店舗やテナントを事務所にするかはよく検討しましょう。
会社を立ち上げる
会社の形態に応じて、必要な登記や手続きを行います。会社の設立には手間とコストがかかりますが、個人事業主の場合は税務署へ開業届を提出するだけで済みます。ただし、不動産業は高額な取引が多いため、信頼性の高い法人のほうがメリットは大きいでしょう。
全国宅地建物取引業協会連合会によると、全国の宅地建物取引業者約12.5万社のうち、法人の割合が約8割、個人の割合が約2割というデータが報告されています。
法人の場合、定款の認証や出資金の払込、登記申請などの手続きが必要となります。
必要な資格を取得する
宅地建物業法により、不動産取引を行う事務所には宅地建物取引士の設置が義務付けられています。
第三十一条の三 宅地建物取引業者は、その事務所その他国土交通省令で定める場所(以下この条及び第五十条第一項において「事務所等」という。)ごとに、事務所等の規模、業務内容等を考慮して国土交通省令で定める数の成年者である専任の宅地建物取引士を置かなければならない。 出典:e-GOV|宅地建物取引業法(昭和二十七年法律第百七十六号) |
宅地建物取引士(宅建士)は、不動産取引を行う際に必要な専門知識と倫理観を持ち、不動産取引の安全と公正を守るための国家資格です。重要事項の説明や重要事項説明書への記名・押印、契約書(37条書面)への記名、押印など、重要な役割を担います。
「宅地建物取引士」になるための流れは次の通りです。
- 国家試験に合格する
- 試験が実施された都道府県知事の資格登録を受ける
- 同都道府県の知事から宅地建物取引士証の交付を受ける
不動産会社の経営に役立つ資格には、他にも賃貸不動産経営管理士やマンション管理士などの資格があります。これらをあわせて取得しておくことで業務の幅が広がり、他社とも差別化が図りやすくなるでしょう。
協会に加入する
不動産会社を経営する際には、協会に加入するケースが一般的です。協会に加入すると、開業に必要な営業保証金が安くなるためです。
不動産会社は、営業を開始するためには営業保証金の供託が求められます。
第二十五条 宅地建物取引業者は、営業保証金を主たる事務所のもよりの供託所に供託しなければならない。 出典:e-GOV|宅地建物取引業法(昭和二十七年法律第百七十六号) |
営業保証金は本店で1,000万円、支店ごとに500万円とされています。しかし、保証協会に加入すれば、弁済業務保証金分担金60万円の納付(支店があれば一店舗ごとに30万円)で営業保証金の代わりにできます。
現在加入できる保証協会は次の2つです。
- 全国宅地建物取引業保証協会
- 不動産保証協会
それぞれで入会金や年会費が異なる点に注意しましょう。
不動産会社を経営するまでに決めること
不動産会社の経営を始める際は、まず次の3つを決めておきましょう。
- 開業場所
- 会社名
- 定款の内容
それぞれについて解説します。
開業場所
開業場所、つまり事務所の立地は不動産会社経営の成功を左右する大きな要素です。視認性や競合の状況、交通の便利さ、物件価格など、多くの要素を考慮して適切な場所を選ぶ必要があります。
具体的には、ターゲット層から需要の高いエリアを探したり、周辺の不動産会社の有無や差別化できるポイントを確認したりするとよいでしょう。
また、オフィスの規模をどの程度にするか、賃貸か購入かといった意思決定も重要です。予算内で適切な広さのオフィスを選び、賃貸か購入かはそれぞれのメリット・デメリットを考慮して決めましょう。
会社名
顧客が覚えやすく、親しみやすい会社名がおすすめです。会社名は、顧客の第一印象を決める大切な要素です。同時に会社のイメージを表現し、競合との差別化を図る役割も担います。
難しい漢字や専門用語は避け、一目で意味が理解できるような名前にするとよいでしょう。不動産会社であることがわかるように「住まい」「ホーム」など住宅に関連するキーワードや、地域名などを組み合わせるのも効果的です。
会社名は後で変更できますが、登記の変更手続きや顧客への通知などさまざまな事務が必要となります。そのため、最初から慎重に検討しましょう。
定款の内容
定款は、会社を運営していくための基本的なルールを定めたものです。会社設立時に作成し、法務局に提出して登記を申請します。一般的に、会社の事業目的や所在地、出資額などの重要項目を記載します。
将来的な事業拡大などを考慮し、わかりやすく簡潔な文章で柔軟な内容にしておくことがポイントです。必ず記載すべき事項などが漏れないよう、定款の作成は弁護士や専門家に相談することがおすすめです。
不動産会社の経営で使いたい補助金・助成金
不動産会社の経営には、さまざまな課題がつきものです。金銭的な課題もそのうちの1つで、人材育成やシステムの導入、事業の維持などに多くの費用がかかります。
ここでは、経営に役立つ政府や自治体の補助金・助成金制度を3つご紹介します。
- IT導入補助金
- 小規模事業者持続化補助金
- キャリアアップ助成金
それぞれ詳しく解説します。
IT導入補助金
不動産会社の経営において、システムの導入は非常に重要です。不動産会社は事務作業が多いうえに顧客管理も複雑であるため、紙やエクセルでの管理だと膨大な時間がかかったり、致命的なミスが頻発したりするおそれがあります。
ただ、開業したばかりの不動産会社にとって、システムの導入はハードルが高いといえるでしょう。そこで活用したいのが、IT導入補助金です。
IT導入補助金は、中小企業等がITツールを導入する費用を補助する制度です。一般的には賃貸管理システムや顧客管理システム、Web予約システム、物件管理システムが補助対象となります。
※参考:独立行政法人中小企業基盤整備機構|IT導入補助金2024
いい生活のシステムもIT導入補助金の対象となっています。また、申請のサポートもさせていただきますので、まずはご相談ください。
小規模事業者持続化補助金
小規模事業者持続化補助金は、小規模事業者(※中小企業基本法第2条第5項に規定する従業員20人以下の事業者)が経営計画に基づいて販路開拓や業務効率化などの取り組みを行う際に、費用の一部を補助する制度です。
具体的には、広報や展示会出店などの費用、システムの導入やホームページ作成費用などが対象です。土地や建物といった不動産購入費用などは含まれない点に注意してください。
※参考:全国商工会連合会|商工会議所地区 小規模事業者持続化補助金
キャリアアップ助成金
キャリアアップ助成金は、厚生労働省が実施している雇用促進施策であり、正社員化や処遇改善の取り組みを実施する事業主に対して助成を行うものです。有期雇用労働者等の正社員化や処遇改善を促進し、人材の確保・育成を図れるでしょう。
2024年2月現在、主に次のようなコースがあります。
- 正社員化コース
- 障害者正社員化コース
- 賃金規定等改定コース
- 賃金規定等共通化コース
- 賞与・退職金制度導入コース
- 短時間労働者労働時間延長コース
- 社会保険適用時処遇改善コース
たとえば、「正社員化コース」は有期雇用労働者を正規雇用労働者へ転換した場合に助成金が支給されるものであり、事前に管轄の都道府県労働局へ「キャリアアップ計画書」を提出することが求められます。
※参考:厚生労働省|キャリアアップ助成金
不動産会社を立ち上げたあとにやるべきこと
ここからは、不動産会社を立ち上げたあとにやるべきことを3つご紹介します。
- 行政への届出
- 会社名義の銀行口座開設
- マーケティング活動
それぞれ詳しく見ていきます。
行政への届出
会社の設立手続きとは別に、税務署や自治体にも法人設立届出書を提出しなければいけません。本店が所在する地域の税務署へ国税に関する届出を行います。また、健康保険や厚生年金についての届け出も、従業員がいなくても行う必要があります。
主な提出書類は下記の通りです。
提出先 | 提出書類 | 提出期限 |
---|---|---|
税務署 | 法人設立届出書 | 設立日から2か月以内 |
給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書 | 事務所の開設日から1か月以内 | |
都道府県税事務所 | 法人設立・設置届出書 | 自治体によって異なる |
市町村役場 | 法人設立・設置届出書 | 自治体によって異なる |
年金事務所 | 健康保険・厚生年金保険新規適用届 | 設立日から5日以内 |
<従業員採用時の手続き> 健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届 | 設立日から5日以内 |
会社名義の銀行口座開設
設立登記が完了したら、会社名義の銀行口座を開設しましょう。会社名義の銀行口座は資金の管理や取引の透明性を高めるために重要です。
必要書類の一例を紹介します。
口座開設に必要なもの | 履歴事項全部証明書(会社登記簿謄本) 定款 会社の印鑑証明書 会社の実印 会社の銀行印 |
銀行によっては必要になるもの | 代表取締役個人の印鑑証明書と実印 株主名簿 本店事務所の賃貸借契約書 事業内容を説明できるもの |
銀行によっては、新設法人ではすぐに口座を開設できない可能性があります。銀行へ行く前に、すぐに口座を開設できるか確認しておくとよいでしょう。
マーケティング活動
行政に届け出を行い、銀行口座を開設したら、マーケティング活動を開始します。不動産会社を開業しても、顧客に認知してもらえなければ意味がありません。
マーケティング活動にはさまざまな種類があります。
- ホームページを運営する
- 不動産情報などのポータルサイトを運営する
- SNS(X、Instagram、YouTube、TikTokなど)を利用する
- メールマガジンを配信する
- Web広告を利用する など
すべてのマーケティング活動を一斉に開始する必要はありません。ターゲットと想定しているユーザーに認知してもらえる方法を検討し、自社にとって優先順位の高いものから取り組んでいくのがおすすめです。
不動産会社を順調に経営するならシステム導入による業務効率化が重要
不動産会社の経営にはシステムの導入が重要です。なぜなら、限られた時間の中で多くの顧客を獲得しつつ、不動産についての正確な情報を提供し、質の高いサービスを提供する必要があるからです。
たとえば、顧客管理や賃貸管理を紙で行っている場合、重要な法改正が起きると、必要な部分をすべて手作業で修正しなければなりません。また、入金や送金の管理など、売上に直接的に寄与しない作業に時間がかかっていると新規顧客の獲得に時間を回すことができず、売上の低迷につながる恐れもあるでしょう。
そこで管理システムを導入すれば、これらの課題を解決できる可能性があります。たとえば、『いい生活のクラウドSaaS』は、売買や仲介におけるさまざまな課題や悩みを解決に導きます。
『いい生活のクラウドSaaS』の売買仲介業務支援サービス
『いい生活のクラウドSaaS』は、不動産業界のあらゆる領域に対応したクラウド型の業務支援サービスです。その中にある、売買仲介業務の課題を解決する支援サービス(システム)は次の通りです。
提供サービス | 売買仲介管理業務のお悩み |
---|---|
いい生活売買クラウド One | ・不動産ポータルサイトに一括で情報を掲載したい ・販売図面や集合チラシを簡単に作成・出力したい ・売り物件の査定書を簡単に作成したい ・各書面の雛形を最新の法令に自動対応させたい |
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不動産会社向けホームページ作成ツール『いい生活ウェブサイト』 | 集客に強いホームページを作成・運営したい |
電子契約 | 電子契約で印紙代などのコストを削減したい |
ビデオトーク | Web内見やIT重説(Web会議システム)を導入したい |
事務作業や書類作成の効率化を目指したい場合、『いい生活売買クラウド One』が役立ちます。売却査定や販売、広告、顧客情報の管理、売買契約、成績管理など、あらゆる仲介業務をデジタル化できます。
また、営業に力を入れたい場合には『いい生活売買クラウド 営業支援』がおすすめです。入居希望者からの問い合わせや反響、追客業務、来店対応といった業務の効率化が可能です。
『いい生活のクラウドSaaS』の賃貸仲介業務支援システム
賃貸仲介業務の課題を解決する『いい生活のクラウドSaaS』の支援サービス(システム)は次の通りです。
提供サービス | 賃貸仲介業務のお悩み |
---|---|
いい生活賃貸クラウド 物件広告 | スマートフォンでサッと物件広告を作成したい 不動産ポータルサイトに一括で情報を掲載したい |
いい生活賃貸クラウド One | 物件チラシや契約書を簡単に作成・出力したい |
いい生活Square(仲介会社向け) | 出先からでも空室情報を検索・紹介したい 内見予約や入居申込をオンラインで完結したい |
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いい生活賃貸クラウド 営業支援 | 営業活動・追客をもっと効率化したい LINEやチャットで効率的に追客したい |
電子契約 | 電子契約で印紙代などのコストを削減したい |
ビデオトーク | Web内見やIT重説(Web会議システム)を導入したい |
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---|---|
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賃貸管理システム『いい生活賃貸管理クラウド』では、いい生活が法改正等に対応した契約書のフォーマットの更新などを行うため、自社で対応する必要がありません。
また、『いい生活Square(管理会社様向け)』を導入すれば、空室募集から内見・申込・賃貸管理までの一連の業務をスムーズに行え、空室対策の効率を向上できます。さらに、『いい生活賃貸クラウド 業者間』を導入することで、仲介をお願いしたい会社にのみ自社物件情報を届けられるため、より角度の高いマーケティングが行えるでしょう。
『いい生活のクラウドSaaS』のサービスラインナップについては、以下で詳しくまとめていますので、まずは自社にあったシステムがないか確認してみてください。
不動産会社の経営はシステム導入で業務を効率化しよう
不動産業務は多岐にわたるため、効率的かつ円滑に進めるためには、事務処理能力は必須といえるでしょう。不動産管理システムを活用すれば、さまざまな業務を効率的に行えます。
さらに、クラウド型なら初期費用を抑えたうえでの導入が可能です。『いい生活のクラウドSaaS』では、賃貸仲介や売買仲介、賃貸管理といったすべての不動産業務をサポートできるため、気になる方は、お気軽にご相談ください。