不動産業界というと不動産関連の企業に入社して働くイメージがありますが、実はフリーランスで働くことも可能です。しかし、フリーランスで働く場合、どのような働き方ができるのか、なかなかイメージが湧かないという方もいるでしょう。
そこで今回は、不動産業界でのフリーランスの働き方について解説します。フリーランスで働くメリット・デメリットや年収相場、成功するポイントも解説しているので、ぜひ参考にしてください。
不動産業界でもフリーランスとして働ける
フリーランスとは、会社といった組織に属することなく、自分のスキルや特技を活かして働くスタイルのことです。個人でビジネスを手掛ける個人事業主の働き方の1つになります。
不動産業界もフリーランスで働く人は珍しくありません。不動産会社の中には、フリーランスと業務委託の契約をして、営業活動を任せているケースもあります。最近は、大手求人サイトでフリーランス向けの不動産営業の求人が多数掲載されており、仕事を見つけやすいのも特徴です。
業種によっては、業界未経験でも働くことは可能です。しかし、業界経験者の方が優遇されやすいので、業界で経験を積んだ上でフリーランスに転身するケースが多く見られます。
不動産業界におけるフリーランスの働き方とは?
不動産業界でのフリーランスの働き方は、多岐にわたります。具体的にどのような働き方ができるのか、フリーランスで活躍できる分野を見ていきましょう。
間取り図や地図の作成
不動産業界では、業務の中で建物の間取り図や案内用の地図を作成することがあります。間取り図や地図の作成には知識が必要で、作成ツールの使い方も理解しておかなければなりません。手間がかかる業務であるため、外注している不動産会社も多いです。
CADやillustratorといった作成ツールの扱いに慣れていれば、業界未経験の人も案件を受けることができます。間取り図・地図作成の案件は、「1枚〇円~」という形式で依頼されていることが多いです。また、月ごとに契約や報酬を支払ってもらう形態も可能です。
継続的に間取り図や地図の作成を依頼したい会社もあるので、長期的に仕事を任せてくれる可能性もあります。
物件情報の資料作成などの事務作業
不動産業界では、営業サポートの一環として物件情報や契約に関する書類の作成、顧客情報・物件情報の入力・管理など、さまざまな事務作業が生じます。少ない人数で運営している不動産会社では、本来の業務と掛け持ちで事務作業を行っているケースも珍しくありません。
クラウドソーシングなどで検索すると、「物件情報の資料作成」といった特定業務の案件が見つかります。掲載する物件情報を指定の形式に当てはめる形で資料を作成していくのが基本なので、業界未経験の人でも対応が可能です。
この他にも、メールの対応など一般事務と同じ業務を外注していることもあります。
物件の写真撮影
不動産業界では、Webサイトに掲載する物件紹介用の写真撮影を外注しているケースもあります。
Webサイトに掲載する物件の写真を撮るためには、現地に足を運ぶ必要があります。とくに、商圏が広い、取扱物件が多いといった不動産会社では、現地への移動や撮影に手間がかかってしまいます。そこで、写真撮影をフリーランスに委託することで、従業員を本業に専念させることができるのです。
不動産検討層の多くは、物件情報に掲載された写真を見て物件に興味を持つため、写真は問い合わせや成約に大きく影響します。
そのため、写真撮影のスキルが高いフリーランスであれば、印象の良い物件写真を撮ることができます。そのメリットから、フリーランスに写真撮影を依頼するケースも少なくありません。
不動産営業
前述したとおり、フリーランスの営業職と業務委託している不動産会社もあります。本来、不動産仲介業を営むためには宅地建物取引業免許が必要です。そのため、宅地建物取引士の資格を持つフリーランスであっても、宅地建物取引業許可がなければ営業できません。
しかし、宅地建物取引業を取得している不動産会社と業務委託すれば、宅地建物取引業許可を持っていないフリーランスでも仲介業務を営むことが可能です。不動産業界での営業経験があれば、ノウハウを活かしながら、フリーランスとして活躍できます。
なお現在は、不動産取引における重要事項説明はオンラインでも可能となっています。そのため、不動産会社の中には、人手が足りないときにIT重説ができる宅地建物取引士を募集するケースもあり、フリーランスでの働き方が以前よりも広がっているといえるでしょう。
不動産業界でフリーランスとして働いた場合の年収相場
フリーランスで働く場合、どのくらいの年収に期待できるのか気になる方もいるでしょう。ここでは、不動産業界で働くフリーランスの年収相場についてご紹介します
年収は成果によって変動する
フリーランスの場合、年収は成果に応じて変動するため、明確な相場はありません。フリーランスには固定給がなく、成果が出た際に報酬を受け取れるフルコミッション(完全歩合)の契約形態が一般的です。
成果が出なければ報酬はありませんが、その代わり成果を出せば出すほど高い報酬を得ることが可能です。
不動産営業なら年収1,000万円以上も夢ではない
不動産業界は高価な不動産を取り扱うため、フリーランスであってもスキル次第で高収入を狙えます。例えば、不動産営業で年収1,000万円以上狙うことも十分に可能でしょう。
厚生労働省が公表する「令和4年度賃金構造基本統計調査」によると、不動産営業の平均年収は約564万円でした。正社員の場合、固定給・歩合給の割合、個人の業績、ボーナスなどによって年収は変わってきます。
前述したように、フリーランスはフルコミッションとなっているので、年収は青天井です。ただし、不動産営業で安定した収入を得るためには、営業の基本やノウハウを理解して、自分なりの働き方を確立させることが大切です。
不動産業界でフリーランスとして働くメリット
フリーランスで働くメリットは年収だけではありません。他にもさまざまなメリットがあるので、見ていきましょう。
事務所を構える必要がない
自分で不動産会社を設立して事業を行う個人事業主もいます。不動産会社を開業する場合、宅建業法に基づいて事務所の設置が必要です。しかし、業務委託として働くフリーランスであれば、必ずしも事務所を構える必要はありません。
業種によってはお客様と打ち合わせが必要になりますが、その場合は貸し会議室やレンタルスペースなどを借りて対応することが可能です。中には、コピー機やオフィスなど仕事に必要な設備を貸し出してくれるサービスもあります。物件情報の資料作成やオンラインによる営業など、業務内容によっては在宅で勤務できるケースもあるため、環境が整っていれば自宅を職場にすることも可能です。
ノルマに悩まされずに済む
不動産会社によっては、厳しいノルマがあることがあります。一方、フリーランスは自分の裁量で仕事ができ、ノルマは存在しません。ノルマ達成のために長時間労働を強いられたり、精神的なストレスによって体調不良になったりといったリスクから解放されます。
ただし、自分の頑張りが収入に直結するため、ある程度のノルマを作った方が良いでしょう。フリーランスであれば、無理のない範囲のノルマを設定し、必要に応じて調整することが可能です。
働く時間を自由に決められる
フリーランスは基本的に労働時間が決まっていないので、働く時間を自由に決めることができます。業種にもよりますが、「午前中だけ」「午後から」「深夜から朝まで」など、タイムスケジュールは個人で調整することが可能です。
労働時間や休日に関しても、自由に決められます。しっかりと仕事をして稼ぎたい人も、プライベートに余裕を持たせたい人も、それぞれのライフスタイルに合わせた働き方が可能です。縛られず1人で仕事をするのが得意、成果を出す自信があるという人にはフリーランスという働き方が向いているといえるでしょう。
不動産会社の開業と比べて初期費用を抑えられる
不動産会社の開業と比べて初期費用をあまりかけずに仕事を始められるのもフリーランスのメリットです。先に述べたとおり、宅建業許可を得て開業する場合は事務所の設置が必要になります。自宅を事務所にできない場合、事務所となる場所を借りなければなりません。
事務所を借りるためには賃料がかかり、さらに仕事をするために設備・備品一式を揃えるためにコストがかかります。それ以外にも、保証協会への入会金や営業保証金、集客のための宣伝広告費、従業員を雇う場合は人件費などが発生します。
フリーランスであれば事務所の設置は必ずしも必要ではありませんし、保証協会への加入も不要です。働くための最低限の環境さえ整えば、少ない初期費用で始めることができます。
不動産業界でフリーランスとして働くデメリット
フリーランスは正社員と比べて自由に働けることに大きなメリットがありますが、その働き方にはデメリットも存在します。ここでは、不動産業界でフリーランスとして働くデメリットについてチェックしましょう。
収入が不安定
フリーランスの場合、収入が不安定になりやすいことが大きなデメリットです。不動産会社の社員は固定給が支払われるため、毎月安定した収入を得ることができます。
フリーランスは収入が青天井である反面、成果を出さなければ報酬を得られません。また、継続的に依頼をくれるクライアントが見つかるまで、自分自身で仕事を見つける必要があります。案件が見つからず仕事ができない状況が続けば、その分収入は減ってしまいます。
仕事があるときは多く稼ぐことができますが、仕事が少ないときや成果を出せなかったときは収入が少なくなるでしょう。このように、会社員と比べて年収・月収が不安定になりやすくなります。
税金などの手続きを自分でしなければいけない
フリーランスになった場合、税金や社会保険に関する手続きは自分で行うことになります。会社員であれば、年末調整や社会保険の手続きは会社が代行してくれるため、個人で行うことはありません。
対して、フリーランスは毎年の確定申告が必要となります。国民年金保険や国民健康保険の保険料も自分で納める必要があるため、確定申告や税金に関する知識をしっかりと身につけておきましょう。
すべて自己責任となる
フリーランスとして働くのであれば、請け負った業務に対する責任はすべて自己責任となります。トラブルが起きても会社がサポートしてくれることはなく、失敗を励ましてくれる上司や同僚もいません。責任がよりいっそう重く、孤独を感じやすいのがフリーランスのデメリットです。
より強い責任感を持って働けることはフリーランスの魅力ですが、そのリスクを理解した上で、チャレンジしていく精神力がフリーランスには求められます。
フリーランスが不動産業界で成功するためのポイント
フリーランスとなると、今までと働き方が変わってくるため、何かと不安が付きまといます。せっかく独立したのに失敗したという事態にならないように、不動産業界でフリーランスとして成功するためのポイントを見ていきましょう。
実績を増やしてからフリーランスを目指す
不動産業界でフリーランスとして働くのであれば、実績を増やしてからがおすすめです。不動産業界で仕事をするためには、専門的な知識、営業・集客などに関するスキル・ノウハウが欠かせないからです。
業界未経験でもできるフリーランスの案件も中にはありますが、専門知識やスキルが求められる業務の方が多いです。そのため、まずは不動産会社で実務を積み、業界知識や仕事に必要なスキルを身につけた上でフリーランスになると良いでしょう。
他にも、宅地建物取引士などの資格を取得することもおすすめです。仕事に関連する資格があれば、クライアントや顧客から信頼してもらいやすくなります。
不動産会社に支払わなければいけない手数料を確認しておく
不動産会社と業務委託の契約を締結する場合、売上の一部が手数料として差し引かれます。差し引かれる手数料が多いと、その分、フリーランスが得られる収入が少なくなるので注意が必要です。
契約を締結する前に、不動産会社に支払う手数料を確認しておきましょう。
節税の知識を身につける
フリーランスは、確定申告と納税を自分で行う必要があるため、税金関連の知識を身につける必要があります。同時に節税の知識も身につけましょう。
日本は課税所得が多いほど、税率が高くなり、所得税が高くなる累進課税制度を採用しています。フリーランスは仕事で成果を出した分だけ収入を得られるため、働き方次第では高額な年収となり、その分税金が高くなりやすいのです。以下に、フリーランスが利用できる節税対策の例をご紹介します。
経費の計上 | 所得税がかかる対象は、売上から経費と所得控除を差し引いた課税所得です。業務でかかった経費を計上して所得を圧縮することで節税になります。 |
青色申告の特別控除の活用 | 確定申告で青色申告をする場合、最高65万円の所得控除を適用できます。 |
少額減価償却資産の特例の活用 | 取得価格30万円未満の減価償却資産であれば、特例によって経費を前倒しに処理でき、それにより節税効果を得られます。 |
節税をしていくためには、経費処理に関する知識や控除・特例を適用するための要件の理解が求められます。必要に応じて、税理士に節税対策の相談をしてみるのも良いでしょう。
フリーランスで稼ぎたいなら不動産業はおすすめ
不動産業界の場合、間取り図・地図作成や事務作業、不動産営業などさまざまな業務のフリーランス案件があります。
フリーランスはフルコミッションとなるため、働き方次第で高収入を目指せることが大きな魅力です。不動産業界で、自由な働き方で稼ぎたいという人は、フリーランスを目指してみてはいかがでしょうか。
また、フリーランスとして成功していくためには、不動産業界での経験やスキルだけでなく、確定申告や税金などのさまざまな知識が必要になります。そのため、実務経験を積む、資格を取るといった下準備をした上で独立することをおすすめします。