
不動産調査や提案を行ううえで、地価、防災、学区、周辺施設などの情報は欠かせません。しかし、これまでこうした情報は複数のサイトに分散しており、確認や資料作成に手間がかかっていました。
不動産情報ライブラリは、国土交通省が2024年に公開した情報プラットフォームです。さまざまな公的情報を地図上に一元的に表示できるため、効率的に情報収集が行えます。
本記事では、不動産情報ライブラリの基本機能、不動産仲介・管理業務における活用法、注意点までをわかりやすく解説します。
土地総合情報システム(現:不動産情報ライブラリ)とは?

土地総合情報システムは、国土交通省が提供していた不動産情報を公開するためのシステムです。地価公示、都道府県地価調査、実際の不動産取引価格などを地図上で確認でき、価格動向の把握に広く利用されてきました。
ただし、掲載されるのは価格情報が中心で、防災や学区、周辺施設といった生活環境に関する情報は掲載されていません。実務で必要な情報をそろえるためには、他のサイトや資料との併用が前提となっていました。
土地総合情報システムと不動産情報ライブラリの違い
2024年3月末をもって、土地総合情報システムは廃止されました。そのため、土地総合情報システムが突然開けなくなった、見れなくなったという方も多いと思います。現在はシステム自体が利用できなくなっています。
代わって公開されたのが「不動産情報ライブラリ」です。この新システムは、従来の価格情報に加え、防災、学区、周辺施設などの多様なデータを地図上で一元的に表示できることが特長です。
従来はこれらの情報が複数のサイトに分散しており、調査には時間と手間がかかっていました。不動産情報ライブラリは、こうしたデメリットを解消するために構築されたシステムです。視覚的に情報を把握できる地図ベースの設計により、検索や比較といった機能面も大きく改善されています。
情報収集の効率化により、業務のスピードアップや提案の質の向上も期待できます。
不動産情報ライブラリが構築された背景
安全な不動産取引の活性化には、正確な情報の把握が不可欠です。そのため、一元管理された情報が、必要な時にすぐに取得できるプラットフォームが必要とされてきました。
不動産会社は、物件調査や査定の際、価格情報以外の幅広い情報をさまざまな媒体から取得しています。これは、不動産のプロであっても手間がかかるものです。
たとえば、自然災害が激甚化するなか、居住地のハザード情報に関するニーズは高まっています。必要な防災情報などが一元的に提供されることで、不動産取引の促進にもつながるでしょう。情報収集にかかる時間を短縮できれば、生産性向上の効果も期待できます。
不動産情報ライブラリで閲覧できる情報

不動産情報ライブラリでは、公的機関が保有するさまざまな情報を地図上でひと目で確認できます。
不動産仲介・管理業務においては、地価公示・成約価格・取引価格といった相場情報の比較や、学区・病院・公共施設の確認、防災リスクの説明など、さまざまな場面で活用できる内容が網羅されています。これらの情報を適切に活用することで、顧客対応の品質向上にもつなげられるでしょう。
ここでは、「不動産情報ライブラリ」の主な機能と活用ポイントを解説します。
価格情報
価格情報では、「地価公示」や「都道府県地価調査」を閲覧することができます。
これらは、不動産取引における価格の妥当性を判断する際の参考となるデータです。また、実際に取引された物件の価格である「取引価格」と「成約価格」も確認することができます。
取引価格は、国土交通省が不動産の売買当事者から収集した情報です。成約価格は、指定流通機構(レインズ)が保有する成約情報をもとに、「レインズ・マーケット・インフォメーション」として提供されているものとなります。
周辺施設情報
周辺施設では、不動産物件の周辺施設に加えて、小中学校の学区なども調べることができます。
他にも、役場、集会施設、図書館、医療機関、福祉施設など、閲覧できる施設は多種多様です。医療機関は、大病院だけでなくクリニックや歯科診療所も掲載しています。駅についても、1日あたりの乗降客数まで確認することが可能です。
これらの施設情報は、居住用不動産の物件情報を作成する際に役立てることができるでしょう。
防災情報
防災情報では、洪水浸水想定区域、土砂災害警戒区域、津波浸水想定、高潮浸水想定区域などに加え、避難施設も調べることができます。
このほか、地形に関する情報として、大規模盛土造成地の情報が記載されている「大規模盛土造成地マップ」も閲覧することが可能です。
山を切り開いて造成された宅地には、盛土と切土で形成された2種類があります。盛土と切土を比較すると、土砂災害のリスクは盛土の方が高いとされています。「大規模盛土造成地マップ」を確認することで、土砂崩れが起こりやすい場所を容易に把握することが可能です。
近年、物件の周辺エリアにおける災害リスクの有無は、多くの不動産検討者にとって関心事となっています。そのため、こうした防災情報を積極的に提供することは、顧客からの信頼を得るうえでも有効です。
都市計画情報
都市計画情報では、都市計画区域や区域区分、用途地域などをまとめて確認することができます。高度利用地区や防火・準防火地域の情報もひと目で把握することが可能です。
これまでは、各自治体のサイトや用途地域マップを個別に確認する必要がありました。手間をかけずに効率よく調べられるようになっています。
人口情報
人口情報では、2015年の国勢調査に基づく地域ごとの人口を確認することができます。
さらに、2020年から2050年までの人口推計も5年ごとに閲覧することが可能です。年代は、0〜14歳、15〜64歳、65歳以上の3つに分かれています。将来の人口構成を把握することで、その地域でどのような不動産需要が見込まれるかを検討しやすくなるでしょう。
たとえば、人口減少が少ないエリアであれば、インフラが維持されやすいと考えられます。暮らしやすさが将来にわたって保たれる可能性が高い、といった見通しを得ることができるでしょう。
不動産情報ライブラリを不動産業務に活かすための使い方

ここでは、不動産情報ライブラリを不動産仲介・管理業務で活かすためのポイントについて解説します。エリア提案や業務効率化、顧客対応の強化、社内教育、さらには営業支援ツールとの連携まで、実務に直結する活用ポイントをご紹介します。
エリア提案の説得力向上
顧客に物件を提案する際、地価の安定や、人口動態、子育て環境といったデータを加えることで、提案の根拠を明確化することが可能です。
こうしたデータは、単に物件そのものを紹介するためだけのものではありません。「なぜこのエリアなのか」を説明する際の補足材料としても有効です。
担当者の主観だけでなく、客観的な数値や根拠を示すことで提案の信頼性が高まります。あわせて、顧客の納得感も得やすくなるでしょう。
特に住宅購入層にとって、周辺環境や将来性に関する情報は安心材料となるため、成約率の向上につながるはずです。
業務効率の改善
不動産情報ライブラリを活用すれば、各自治体のホームページや統計データを個別に調べる必要がなくなります。その結果、資料作成のスピードが大きく向上するでしょう。
物件提案や商談の際に必要な情報をワンストップで取得できるため、作業の手戻りや確認作業が減り、業務全体の無駄を省くことが可能です。限られた時間をより多くの顧客対応や提案準備に充てられるようになります。
顧客満足度の向上
物件そのものの情報に加えて、地域の暮らしやすさや将来の資産価値もあわせて提案することが可能です。不動産情報ライブラリは、これらの情報を集約しているため、スピーディーな情報提供にもつながります。
対応がスピーディーであれば、顧客は「準備されている」「信頼できる」と感じやすくなります。そこに、丁寧で正確な説明が加われば、さらに信頼感を高めることができるでしょう。信頼関係を築ければ、紹介やリピートにつながる可能性も高まります。
社内教育ツールとしての活用
新人スタッフの教育においても、不動産情報ライブラリは有効です。地域ごとの特徴を定量的なデータで学ぶことで、営業トークの質が向上し、戦力化するまでの期間を短縮することができます。
情報格差が小さくなっている現代において求められるのは「真のプロフェッショナル」です。得られた情報を活用し、高い付加価値を生み出せる営業マンが重宝されます。
有益な情報を適切に活用し、実践的な技能と組み合わせることで、独自の営業スタイルを構築することができるはずです。
不動産業務支援ツールとの連携
不動産情報ライブラリが、提案力の強化や業務の効率化に有効であることは、これまで述べてきたとおりです。これらの特性をさらに活かすためには、営業現場の活用事例を整理し、社内で共有することが重要です。
共有された情報を通じて、営業活動を客観的に振り返ることができます。ノウハウを組織全体で蓄積することにもつながるでしょう。その結果、誰が対応しても一定の品質を保つことが可能となり、営業力の底上げが期待できます。
不動産顧客管理・営業支援システムの『いい生活賃貸クラウド 営業支援』や『いい生活売買クラウド 営業支援』などのツールを活用すれば、情報の活用と業務の最適化を同時に実現することが可能です。顧客情報や商談履歴、提案内容などを一元管理することで、確認作業や情報共有の手間を大きく減らすことにつなげられます。
不動産情報ライブラリで得た知見を現場で有効に活かすためにも、こうした業務支援ツールとの併用は、非常に有効な選択肢といえるでしょう。
不動産情報ライブラリを使う際の注意点

不動産情報ライブラリは、不動産調査や提案に役立つ多様な情報をまとめて確認できる便利なツールです。その一方で、公的情報をもとにしたシステムとして、利用にあたっての注意点もあります。
たとえば、情報の更新タイミングや反映精度、扱えるデータの範囲などは、実務に影響を及ぼす可能性があるため、注意が必要です。
ここでは、不動産情報ライブラリを現場で正しく活用するために押さえておきたいポイントを整理して解説します。
データが古い可能性がある
不動産情報ライブラリに掲載されているデータは最新のものとは限りません。情報元は各種不動産関連サイトの情報ですが、そちらが更新されていても、すぐに反映されないことがあるからです。
たとえば、用途地域の変更や都市計画の更新など、地域の状況に関わる重要な情報が古いまま表示される可能性もあります。こうしたズレに気づかず資料を作成してしまうと、提案内容に誤りが生じ、顧客との信頼関係に影響する恐れもあります。
正確さが求められる場面では、不動産情報ライブラリだけでなく、参照元のサイトもあわせて確認することが大切です。
データ誤表示の恐れがある
不動産情報ライブラリが運用を始めた2024年4月11日の直後、地価表示の対前年変動率に関して誤表示が発生した事例があります。システム上の予期せぬトラブルによって発生した事象でした。
こうしたトラブルは一時的なものである可能性が高いものの、今後も誤表示やデータの反映遅れが起こる可能性は否定できません。
特にデータの公開直後や更新タイミングの前後は、内容にズレが生じるケースもあるため、利用時には慎重な確認が求められます。
不動産情報ライブラリを活用する際は、「いつ」「どこ」から取得された情報かなど、データの出所も把握したうえで、利用する姿勢が重要です。
調べられない情報もある
不動産情報ライブラリでは、登記情報や路線価を調べることはできません。登記内容は、これまで通り「登記情報提供サービス」で確認する必要があります。また、相続税や贈与税の計算に使われる路線価については、国税庁の「財産評価基準書」から確認しなければなりません。
つまり現時点では、不動産情報ライブラリだけですべての調査を完結させることはできないということになります。そのため、用途や目的に応じて、他の公的サービスとの併用が必要です。
不動産業務で扱う情報は多岐にわたります。また、物件の権利関係、税率、地番や面積の確認など、それぞれに適した情報源があります。提案や調査に正確を期すためには、不動産情報ライブラリの役割を理解したうえで、その他サービスとの使い分けが大切です。
不動産会社のスキル向上が求められる
不動産情報ライブラリのようなツールが増えたことで、不動産に関する情報を誰でも簡単に手に入れられるようになりました。そのため、不動産会社は、こうした情報について正確に理解し、説明するスキルを磨くことが求められます。
たとえば、顧客が不動産情報ライブラリを見て「近所で〇〇万円で売れた物件がある」と話す場面も出てくるでしょう。近くの物件がその価格で売れたなら「うちも同じくらいで売れるだろう」と考えてしまいがちです。
その際、売買事例はあくまでも1つの目安であることを伝えなければなりません。時期や条件、間取り、築年数などによって価格は大きく変わることを、理解してもらう必要があります。
誰でも使える便利な情報だからこそ、不動産会社としては正確な理解を促す対応が欠かせません。顧客が事前に調べた情報をもとに相談してくる場面を想定し、適切に説明できる体制を整えておくことが大切です。
不動産情報ライブラリを活用し、顧客満足度の向上、業務効率化を実現しよう

不動産情報ライブラリは、不動産に関する情報を集約した、無料で利用できるオンラインサービスです。土地の価格や防災情報、周辺施設、人口動態などを1つのサイトでまとめて確認できます。
これまで、複数のサイトを行き来した情報収集も、このサービスを使えばワンストップで終わらせることができます。登記情報や路線価には対応していませんが、使用頻度の高い情報を効率よく収集できる点は大きなメリットです。
不動産情報ライブラリで得た情報は、顧客とのコミュニケーション円滑化に活用できます。根拠ある提案ができれば、やり取りがスムーズになり、成約までの流れも早めることができるでしょう。
なお、お客さまからの問い合わせ、来店対応、追客といった営業活動を効率的に行うためには、「いい生活賃貸クラウド 営業支援」や「いい生活売買クラウド 営業支援」といった不動産業務支援ツールの活用も重要です。迅速かつ正確な顧客対応を実現することで、お客さま満足度の向上に貢献してくれますので、ぜひ導入をご検討ください。