
不動産業界では近年、業務の効率化や生産性向上を目的に、外部への業務委託やアウトソーシングの活用が一般的になってきました。「BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)」や「BPaaS(Business Process as a Service)」といった言葉も業界内で徐々に認知され、「業務を外に出す」という選択肢が浸透しています。
しかし、こうした“業務代行”が本当に課題の解決につながっているかといえば、必ずしもそうとは限りません。なぜなら、業務のやり方自体に課題があった場合、作業だけを切り出しても根本的な解決にはならないからです。
不動産業務の全体像:それぞれの領域が抱える課題

不動産会社の業務は、いくつかの主要な領域に分けられます。以下に、それぞれの領域と、そこでよく見られる課題について解説します。
営業業務(賃貸・売買)
- 物件情報の把握と提案、顧客との内見調整、契約までのナビゲーションなどを担当。
- 問い合わせ対応は日々変動が大きく、特に繁忙期(1月〜3月)は対応に追われがち。
- 物件情報の入力や顧客管理は手作業中心で、二重登録や入力漏れが起きやすい。
契約・重要事項説明書の作成
- 不動産特有の法令知識が必要で、知見のある担当者に業務が集中しがち。
- 物件ごとに内容が異なるため、一定量の業務が契約の都度発生
顧客対応(来店・電話・メール)
- 顧客ごとの対応履歴を統一して管理できていない不動産会社も多い。
- 引継ぎが難しく、「誰と何を話したか」がブラックボックス化しがち。
募集図面・ポータルサイト掲載業務
- 募集図面の作成や物件写真の管理、ポータルサイトへの入力は手間がかかるうえに、ミスが許されない。
- 更新頻度が高く、掲載情報の最新化に手が回らないという声も。
管理・更新業務(物件情報、家賃、入居者)
- 各管理項目が点在しており、更新のたびに複数の帳票やシステムを開く必要がある。
- 誤入力や更新漏れがクレームにつながるため、精神的負担も大きい。
会計・入金確認・オーナー送金
- 毎月決まったサイクルで作業が発生するが、データ連携が取れていないケースが多い。
- 送金ミスや入金漏れが発生すると信用問題に発展しかねない。
不動産業務の現実と、その背景にある慣習

先述した通り、不動産会社の業務は営業活動・契約管理・顧客対応・募集業務・物件管理・会計処理など多岐にわたり、これらを限られた人員で分担しながら進めるケースが大半です。また、不動産業界には「昔ながらのやり方」が今なお色濃く残っており、以下のような構造的な課題が見られるケースがあります。
こうした背景があるため、単純に業務を代行しても根本的な改善にはつながらず、「現場が楽にならない」というケースが多く見受けられます。
不動産業務と“習わし”の再整理:なぜ見直しが必要か?

不動産会社では「昔ながらのやり方」が今なお色濃く残っており、構造的な課題が見られるケースがあります。
例えば、
- 重要な業務が“ベテラン社員の経験”に依存しており、形式化されていない
- 引継ぎが口頭ベースになりがちで、業務の属人化が進む
- デジタル化が進む一方で、紙やFAXといったアナログ手法も多くの業務で活用されている
- システム導入が“形だけ”になり、実運用に活かされていない
といったように、標準化されておらず、社員の慣れや勘に依存した属人的な業務が発生することがあります。
このような「属人性の高い業務習慣」は、短期的には柔軟に見えても、
- 担当者が変わるとやり方がわからない
- 誰が見ても業務の状況がつかめない
- 二重入力や作業の抜け漏れが発生する
などの非効率やリスクを生む原因となります。
業務構築支援は、こうした“慣習の整理”からもアプローチします。単に作業を整理するのではなく「なぜこのやり方なのか?」を現場と一緒に問い直し、本当に必要なプロセスを選び直すところから支援を進めます。
多くの不動産会社が抱える“業務の課題”

不動産会社の現場では、このような声をよく耳にします。
- 「人手不足で毎日残業が続いている」
- 「業務に手が回らず、対応が遅れがち」
- 「クラウドや新しいシステムを導入したけれど、使いこなせずかえって混乱している」
- 「今の業務を改善したくても何から手をつければいいかわからない」
こうした問題の背景には、業務フローや運用体制が、変化する時代やテクノロジーの進化に十分に対応できていないといった課題があります。
属人的な体制や従来の手法に頼りすぎていると、急激に変化する市場や顧客ニーズへの柔軟な対応が難しくなってきています。むしろ、限られたリソースの中で今の業務フローを最適化し、業務を効率的に行うかが重要なポイントとなっています。
業務委託時に見落とせない「セキュリティ」の視点

近年、不動産業界でもクラウドサービスやSaaSの導入が進み、業務のデジタル化が一層加速しています。しかしその一方で、情報漏洩やランサムウェア被害といったセキュリティインシデントのリスクも高まっています。
政府においても、クラウドサービスのメリットを最大限に活用し、より効率的で安全な行政サービスを提供するために、クラウド・バイ・デフォルト原則が推進されています。
特に、外部に業務を委託する場合には、その委託先のセキュリティ体制が自社と同等、あるいはそれ以上に整っているかをしっかり確認しておく必要があります。
「信頼して任せていたのに、情報漏洩が発生した」という事態になれば、最終的に責任を問われるのは委託元である不動産会社です。
具体的には、
- 個人情報や契約データの取り扱い方針
- システムやツールの脆弱性管理
- 社内オペレーション(データ持ち出し制限、アクセス権限管理)
- 定期的なセキュリティ研修や監査体制
といった点が重要なチェック項目になります。
業務構築支援を行う私たちも、セキュリティの観点から情報の取り扱いや運用フローに配慮しながら、安心して任せていただける体制を構築しています。
「便利さ」と「安全性」の両立は、これからの業務委託に欠かせない前提です。
私たちの提供する価値:「業務構築支援」というアプローチ

そこで私たち「いい生活」は、「業務代行」ではなく『業務構築支援』という考え方を軸にしたアプローチを行っています。
業務構築支援とは?
「業務構築支援」とは、単に業務を請け負うのではなく、
- 業務の全体像を整理する
- プロセスを設計し直す
- 再現性のある“型”をつくる
- その上で実行フェーズも支援する
という流れで、現場業務を再定義・設計し、運用可能な形に整えることを目的とした支援スタイルです。
例えるなら、ただ料理を出すのではなく、レシピを一緒に作り、必要な材料や道具も揃えたうえで、キッチンに一緒に立つようなものです。
支援のステップ:どう業務を構築するのか?

業務構築支援では、以下のようなプロセスで現場に入り、支援を進めていきます。
Step 1:業務の棚卸し(可視化)
まずは現場の業務をヒアリングしながら、“今どうやって回っているのか”を洗い出します。Excel、紙、口頭……など多様な情報経路を一枚のフロー図に整理し、属人化・ムダな重複・非効率な業務が浮き彫りになります。
Step 2:業務プロセスの設計・標準化
可視化されたフローをもとに、「やるべきこと」「やらなくてもいいこと」「もっと良いやり方」を分類・再設計します。属人化されていた作業を誰でも再現できるように、マニュアルや業務手順書として整備します。
フローの改善と並行して、ツール・システムの整理や連携提案を行うこともあります。
Step 3:運用フェーズへの落とし込み(実行支援)
設計された業務プロセスを、実際に現場へ落とし込みます。必要に応じて私たち自身が業務を行いながら、無理なく業務が定着するまで伴走します。
この段階で初めて「代行」に近い役割を果たしますが、それは仕組みありきの代行です。
実績と効果:業務が“まわる”ようになると、会社はどう変わるか?

事例①:空室確認の属人業務を標準化
A社では、管理物件の空室確認作業が完全に担当者任せとなっており、対応方法や使用ツールも人によって違い、繁忙期にはトラブルが頻発していました。
そこで、業務フローを洗い出し、使用ツールの統一・テンプレート整備・マニュアル化を実施し、一部を私たちが代行しました。
結果として、
- 担当交代時の混乱がゼロに!
- 業務時間が週5時間削減!
- 顧客対応スピードが向上!
などの効果が生まれました。
事例②:募集図面の作成業務を設計+実行
募集図面の作成業務も、属人化しやすい業務の一つ。B社では、担当者が毎回一枚一枚手作業で画像を加工・保存していました。
まず「どの情報を、どの順番で、どんな見せ方で作っているか」を分析。テンプレート化と業務手順書の作成を通じて“図面の型”を設計し、以後の実行業務は当社側で実施。
これにより、
- 作業時間が従来の3分の1に!
- 図面品質が一定に保たれる!
- 営業担当の業務量が激減!
といった改善が実現しました。
なぜ今、「業務構築支援」が求められているのか?

従来のように「人手不足だから外に出す」だけでは、これからの不動産業界の複雑化・多様化には耐えきれません。
むしろ今は、
- 慢性的な人手不足で、現場の疲弊が進んでいる
- IT人材が足りず、DXの活用が進まない
- システム導入に伴う業務整理が追いつかず、かえって非効率になっている
といった“構造的な問題”に直面している企業が多く存在します。
こうした中で求められるのは、単なる外注ではなく、「業務のやり方そのものを再構築し、必要な部分は外部と協働して運用していく」という柔軟なアプローチであり、それこそが業務構築支援の本質です。
まずは「一部分」からの支援も可能です

業務構築支援は、全社規模で取り組む必要はありません。たとえば以下のようなスモールスタートも可能です。
- 「募集業務」だけ、棚卸しから見直してほしい
- 新人教育のための「業務マニュアル化」から始めたい
- 現在使っているツールやシステムを、活用できる形に再設計したい
一部の業務を入口に、少しずつ全体に展開していくことも可能です。「この業務、どうにかしたい」というところから、ぜひお気軽にご相談ください。
「仕組み」をつくり、「共に」動かすという姿勢

業務を外に出す前に、業務そのものと向き合ってみる。これが、私たちの考える「業務構築支援」の出発点です。
急速に変化する時代だからこそ、足元の業務を整えることは、不動産会社の未来に向けた大きな投資になります。人材不足、業務過多、DX対応……そうした課題の根っこには、必ず“業務のあり方”が関わっています。
「業務は預けるものではなく、共につくるもの。」私たちは、そうした姿勢で、不動産業務の変革を支援していきます。