
団塊世代が75歳を迎える2025年は、不動産業界にとっても大きな転換点といえるでしょう。相続の増加による流通物件数の増加、空き家の管理・処分の負担、地方と都市の価格格差の拡大、そして不動産業界における人手不足の深刻化──。2025年問題は、不動産会社の実務に直結する課題として、すでに現場に影響を与えています。
こうした変化にどう向き合い、どう備えるか。不動産会社には、時代に合わせた住宅・サービスの提供、自治体や異業種との連携、そして顧客満足度の向上と業務の効率化を両立するためのIT活用が求められています。
この記事では、不動産会社が直面する具体的なリスクを整理し、それぞれに対してどのような業務改革や体制づくりが必要かについて、わかりやすく解説していきます。
2025年問題とは

2025年問題とは、団塊の世代が75歳の後期高齢者の年齢に達することで表面化する社会課題です。医療や介護、年金制度、労働人口など、さまざまな領域に影響が及ぶとされています。
本格的な超高齢社会に突入すると、医療や介護にかかる支出は今後ますます膨らんでいく見込みです。年金制度の持続可能性や労働人口の減少など、複数の構造的な問題が深刻化することが懸念されています。
2025年問題が不動産価格に与える影響

2025年問題が不動産価格に与える影響は、全体としては限定的なものと見られています。というのも、少子高齢化や空き家の増加といった要因は、すでにある程度市場に織り込まれているためです。さらに、都市部では依然として堅調な需要が続いており、価格が大きく下落するリスクは低いと考えられます。
一方で、地方の不動産価格については慎重な見方が必要です。都市部への人口集中が今後も進むと予想される中、地方では緩やかな価格の下落が続く可能性があります。この動きが続けば、地方における住宅や土地の流通はさらに停滞することが懸念されます。
2025年問題が不動産業界に与える影響

不動産価格の話だけでは2025年問題の本質は見えてきません。相続物件の増加、空き家の拡大、地方と都市の二極化、そして人材不足。こうした課題はすでに顕在化しており、不動産会社の運営や現場に大きな影響を与えています。ここでは、それぞれの影響を具体的に整理してみたいと思います。
相続物件が増加する
団塊世代の高齢化が進む中、相続された不動産の売却件数は今後さらに増えていくと見込まれます。その要因として遺産分割の難しさがあります。
相続人が複数いる場合、不動産を物理的に均等に分けることは現実的ではありません。このため、多くのケースでは不動産を売却し、現金化したうえで分配する方法が選ばれます。
こうした背景から、2025年問題の影響として「相続物件の増加」は避けて通れないテーマといえるでしょう。高齢化によって相続の発生件数が増加した結果、市場に出回る不動産の件数も増えていくと見込まれます。
空き家の増加が加速する
空き家はすでに社会問題となっていますが、今後さらに増加することが予想されています。こうした空き家の中には、管理が行き届かないまま放置されているものも少なくありません。空き家の放置が続くと、建物の劣化が進みやすく、周辺環境への悪影響や、災害時の倒壊・火災リスクの増大にもつながります。
そのため、行政や地域の取り組みが進んでいます。その一方で、空き家を相続した側の管理負担や、売却・活用の判断に悩むといったケースも少なくありません。
こうした状況に対し、不動産会社には相談先としての役割が期待されます。売却や賃貸、解体後の活用提案など、所有者や相続人が判断しやすくなるような選択肢を整理し、実行も含めた支援が重要です。
都市部と地方の二極化が進む
需給バランスの崩れから、不動産価格には下落圧力がかかっています。特に地方では、その傾向が顕著です。一方で、都市部への人口集中は今後さらに進むと見られており、価格の維持や上昇が続く可能性もあります。こうした動きにより、地域ごとの価格差は今後さらに拡大し、二極化がいっそう進行することが懸念されます。
人口減少が進むエリアでは、高齢者を含め、多くの人が生活の利便性を求めて都市部へ移動する傾向にあります。交通の便や医療体制といったインフラの充実度が、移住先を選ぶ際の重要な判断材料となっているためです。
また、空き家の増加による供給物件数の過多も見逃せません。売却物件が増える一方で、少子化によって購入希望者の数は減少していきます。このように、供給と需要のバランスが崩れることで、不動産の資産価値が下がるという懸念が広がっています。
人材不足が加速する
2025年問題がもたらす影響の中でも、人材不足の深刻化は特に大きな課題です。非婚化や晩婚化の進行により、少子化はさらに加速しています。働く世代の人口よりも、引退を迎える高齢世代のほうが多い状況が続いている状況です。
この傾向は、特に中小規模の不動産会社において顕著です。経営層の高齢化が進み、事業承継や営業体制の維持に不安を抱える企業が増えています。人手不足の影響は、採用活動や日常業務の運営にも広がりつつあるといえるでしょう。
このような状況を変えていくためには、業界全体で改善に取り組み必要があります。古い働き方を見直すことはもとより、休暇制度や労働環境の整備を進める必要もあるでしょう。若年層に対して不動産業界で働くことの魅力や、社会的意義をきちんと伝えていく姿勢がこれまで以上に求められます。
不動産会社が取るべき2025年問題への対応

相続や空き家、人材不足など、2025年問題がもたらす影響はすでに顕在化しています。これらの課題は放置すれば事業の継続を脅かし、対応の遅れが競争力の低下にも直結するものです。
ここでは、不動産会社が取るべき2025年問題への対応について整理しました。ニーズに合った住宅やサービス、地域や異業種との連携、業務の見直しやIT活用など、今求められる現実的な対応策をまとめています。
時代のニーズに合った住宅、サービスの提供
高齢化、健康志向、環境への意識の高まりなど、社会課題が複雑化する中で、住宅や関連サービスの見直しは避けて通れません。
たとえば、見守り機能や生活相談との連携、外国人向け住宅、民泊対応など、多様化する暮らしのスタイルに合わせた工夫が必要です。また、サブスクリプション型住宅やシェアハウス、省エネ住宅といった新しい住まい方への対応も進んでいます。
こうした動きに対応するには、リフォーム事業や福祉・観光など他分野との連携も視野に入れながら、柔軟かつ実践的な取り組みが求められます。
自治体、異業種と連携した空き家の活用
空き家の利活用は、地域の再活性化にもつながります。テレワークや地方移住への関心の高まりを背景に、空き家をリノベーションして賃貸経営に活用する動きが広がっています。
不動産管理の面では、建物情報の共有や安全性の確保が欠かせません。建物の状態や所有者情報が不明確なままでは、利用が進みにくくなります。また不動産仲介の面では、空き家バンクや移住支援制度を活用することで、地域外の移住希望者ともマッチングしやすくなります。地域の枠を超えた需要の掘り起こしにつながる点でも有効です。
今後は、自治体に加え、建築・福祉・ITなど異業種との連携を深めながら、実効性のある空き家活用の仕組みづくりが求められます。
不動産業務のIT化による業務改革
手書きの申込書、紙やFAXによるやりとり、担当者しか把握していない対応履歴。こうしたアナログで属人的な業務の積み重ねは、対応の質やスピードにばらつきを生じさせる要因となります。
このような課題に対しては、業務のIT化によって仕組み化する取り組みが効果的です。どのスタッフが対応しても一定の品質を保てる体制を整えることで、迅速かつ正確な対応が可能になります。
近年では、IoTやAIといった技術革新も進み、不動産業界にも新たな選択肢が広がっています。これらの技術を業務に取り入れることで、従来の業務フローを見直すきっかけにもなります。結果として、さらなる業務改善効果も期待できるでしょう。
不動産業務のIT化による効果は、単なる効率化にとどまりません。「顧客満足度の向上」「ワークライフバランスの改善」「コスト削減」など、幅広い成果が期待できます。業務の質を高めながら、競争力の強化と柔軟な働き方の両立を実現する鍵として、今後ますます注目が高まっていくことでしょう。
①顧客満足度の向上
手書きの申込書は、記入ミスが起こりやすく、内容の確認や修正に手間がかかります。さらに、契約のたびに来店を求められるといったことがあると、顧客の負担感はより大きなものになります。「面倒」「不親切」といったマイナスの印象が積み重なることで、契約そのものへの不安や不満にもつながりかねません。
そのためにも、IT化による手間や負担を削減し、顧客満足度の向上を図ることが大切です。たとえば、不動産業界のWeb接客・IT重説向けに最適化したビデオ通話クラウド『いい生活 ビデオトーク』であれば、オンラインで重説を実施することができます。来店不要で、顧客の都合よい時間・場所で実施できることから、顧客負担の大幅な削減につなげられるでしょう。
また、管理会社さま入居者さまのコミュニケーションに特化した専用スマホアプリの『いい生活 Home』は、入居者さまの対応をアプリ上で完結することが可能です。設備の不具合や各種相談などをチャットで気軽にやりとりすることができます。
②ワークライフバランスの向上
不動産業界における働きにくさは、現場の大きな課題の一つです。長時間労働や休日出勤の常態化、属人的な業務体制。こうした状況は、スタッフの負担や定着率の低下につながっています。
特に少人数体制で運営する企業にとっては、ひとりの欠勤や退職が、業務の停滞を直接引き起こすリスクとなります。その負担を分散できる仕組みづくりは、急務といえるでしょう。
不動産業務のIT化は、このような課題にも有効な解決策となります。業務を平準化することで、働き方に余裕が生まれ、無理のない労働環境を整えることができます。
たとえば、不動業務のデジタル化を支援するサービス『いい生活賃貸クラウド 営業支援』や『いい生活売買クラウド 営業支援』を活用すれば、顧客対応の履歴や案件の進捗状況をすべてクラウド上で一元管理できます。情報共有が円滑になることで、担当者不在で業務が遅滞するといった状況は解消されるはずです。
急な休みや時短勤務のスタッフがいても、引き継ぎなしで対応できる環境が整えば、有給休暇の取得や柔軟なシフト運用も実現しやすくなるでしょう。人手不足が深刻化する中で、不動産業界が持続的に成長していくためにも、ITを活用した「人に依存しすぎない仕組みづくり」が不可欠です。
③業務の属人化を防ぐ
業務の属人化を防ぐことは、事業承継や拠点拡大に向けた土台づくりとしても重要です。ノウハウや顧客対応が個人に依存していると、業務の引き継ぎが属人的になり、組織として仕組みを受け継ぐことが難しくなります。
その結果、対応品質にばらつきが出たり、引き継ぎ後の対応が遅れたりすることで、現場レベルでの機会損失が生じやすくなるでしょう。組織全体で同じ水準のサービスを提供できる体制を整えることが、継続的な成長と事業運営の安定化に欠かせません。
『いい生活賃貸クラウド 営業支援』、『いい生活売買クラウド 営業支援』は、業務の属人化を防ぐうえで有効なツールです。営業担当がいつ、どのようなやりとりをしたのかを時系列で確認でき、チーム全体で状況を共有することが可能になります。情報共有の体制が整っていれば、担当者が不在でも質の高いフォローが可能になり、商談機会の損失防止にもつながります。
④業務効率化によるコストの削減
申込書の手書きや転記、FAXや郵送でのやり取りなど、紙を前提とした業務は、リソースと時間を大きく消費します。加えて、記入ミスや読み取り間違いといった人為的ミスも起こりやすく、確認や差し戻しなどの対応にも手間がかかりがちです。結果として、人件費だけでなく、紙代や郵送費といった経費も積み重なり、コストがかさむことになります。
内見予約・入居申込サービスとリアルタイム連携する賃貸業者間流通サイトの『いい生活Square』を活用すれば、入居申込や審査依頼の手続きを完全にオンライン化することが可能です。申込情報は入力と同時に管理画面に反映されるため、紙への転記やFAX送信、確認作業といった煩雑な業務が不要になります。
これにより、作業時間を短縮できるだけでなく、無駄な経費の削減や業務負担の軽減にもつながります。また、申込内容の確認や進捗状況も即時に把握できるため、対応のスピードと正確性が高まり、業務の品質向上も期待できるでしょう。
不動産業務のIT化で、2025年問題の課題を一つずつ解決しよう

本格的な超高齢社会に突入する2025年問題を踏まえ、不動産会社に求められるのは、柔軟な対応力と業務の仕組み化です。業務の属人化を排除し、スタッフ全員が同じレベルで対応できる体制を整えることがポイントになります。これにより、成約機会の損失防止や働きやすい職場環境の実現、さらには顧客満足度の向上につなげていくことができます。
そのためには、ITを活用した業務の見える化が欠かせません。情報をクラウドで一元管理し、作業の効率化と標準化を進めることで、コストを抑えつつ業務品質を高めることができます。不動産業務のIT化を促進する各種クラウドツールを活用することで、日々の業務に変化をもたらし、将来を見据えた体制づくりへとつなげていくことができます。
不動産業務のIT化は、単なる効率化の手段ではありません。これからの時代に備えた「仕組み」の強化であり、持続的な成長のための第一歩といえるでしょう。
・執筆者

株式会社いい生活 マーケティング本部
マーケティング部
広報部
全国の不動産市場向けイベント、セミナーなどにて多数登壇、皆様のお役に立つ最新情報を発信しております。