
管理物件のゴミ置き場でゴミが散乱すると、景観や衛生環境を損なうだけでなく、入居者満足度の低下や物件価値への悪影響にもつながります。そのため、ゴミトラブルを早期に収束させ、再発を防ぐための仕組みづくりが求められます。
この記事では、ゴミが散乱する主な原因や現場での確認・清掃の手順、掲示物や設備改善による再発防止策についてまとめています。そのうえで、入居者への注意喚起や情報共有を円滑に行うための工夫などにも触れ、安定した物件運営につなげるポイントを解説します。
アパートでゴミ散乱が発生する主な原因

アパートなどの集合住宅のゴミ置き場で、ゴミが散乱する主な原因にはいくつかのパターンがあります。
最も多いのは、収集日や時間を守らないといったゴミ出しルールの違反によるものです。ルール違反によって回収されなかった残置ゴミは、カラスや猫に荒らされたり、風雨で飛散したりします。
次に、囲いや屋根がないといった設備が不十分なケースです。この場合、ゴミの散乱だけでなく臭気の拡散を招き、近隣からの苦情につながることも少なくありません。
また、管理体制の不備がこれらに拍車をかけることもあります。清掃が滞ることで汚れが蓄積し、住人のマナー意識が低下し、散乱が繰り返されやすくなるといった悪循環に陥りがちです。さらに、人通りや立地条件によっては外部からの不法投棄が重なる場合もあり、問題が慢性化する原因となります。
こうした状況を放置するとゴミの散乱による被害は拡大します。そのため、発生時には即時の清掃や注意喚起といった初動対応を徹底し、継続的な管理と組み合わせることでリスク回避を図ることが求められます。
ゴミ散乱時に管理会社が取るべき初動対応

管理物件の周辺でゴミが散乱すると、入居者の生活環境が損なわれ、物件そのものの印象も大きく悪化しかねません。こうした状況に直面したとき、管理会社がどれだけ迅速かつ適切に動けるかが、入居者満足度を維持し、物件価値を守るうえで重要なポイントになります。
初動対応では、まず現場の確認と記録を行い、その後に清掃・応急処置を実施し、再発防止策へとつなげることが求められます。ここでは、その具体的な流れを段階ごとに解説します。
現場を確認し、写真で記録を残す
ゴミが散乱している旨の報告が入ったらまず現場に向かい、状況をしっかり確認して写真などで記録を残すことが大切です。現場では、以下の手順で進めていきましょう。
①散乱の範囲・具体的な状況を観察する
ゴミ置き場内や周辺通路、敷地境界など、どこでゴミが散乱しているのかを確認する。また、散乱しているゴミの種類(生ゴミ、粗大ゴミ等)や、ゴミ袋の状況(破れている・指定の袋かどうかなど)を確認する。
②ゴミ散乱が発生した時間帯を確認する
ゴミの散乱がいつ発生したのか(収集日前/収集日朝/夜間など)を確認する。また、その際の天候(風の強さ・雨・夜露など)についても記録しておく。
③入居者からの聞き取り
近隣住戸の入居者に収集日や時間を守っていたか、分別が適切だったかを確認する。さらに、入居者以外の持ち込みや不法投棄、特定時間帯での散乱、悪臭や害虫・ネズミ被害の有無などについても詳しく聞き取りを行う。
④写真撮影と記録の保存・共有
ゴミの散乱が確認されたら、ゴミ置き場のネットや蓋など周囲の状況を複数角度から撮影し、日時入りの写真を記録として残す。また、住人への聞き取り内容や現場の状況を報告書形式でまとめ、物件担当者やオーナーに共有する。説明責任を果たすとともに原因特定や再発防止策の検討に役立てる。
散乱したゴミの清掃と緊急対応
状況確認を終えたら、速やかに清掃に取り掛かりましょう。ゴミの散乱状況に応じて業者への清掃依頼なども検討しつつ、早急に現場を整えていきます。悪臭や景観被害を抑え、入居者に迷惑がかからないよう配慮することが大切です。具体的な対応手順は以下の通りです。
①散乱したゴミを安全かつ衛生的に処理する
散乱したゴミが生ゴミや可燃ゴミであれば、自治体指定の袋にまとめ直す。破れた袋は新しい袋に詰め替え、不燃物や資源ごみが混ざっていれば分別する。
床にこぼれた生ゴミの汁などは、モップや吸水シートで拭き取る。必要に応じて消臭スプレーを使用する。害虫が発生している場合は殺虫剤で処理し、周辺に残った細かい破片や紙くずも丁寧に掃き取る。
②設備の応急処置を施す
ゴミネットの破れ、蓋の歪み、囲いの破損といった設備に不具合がある場合は、その場で応急的に補修する。テープや簡易カバーを用いて一時的にゴミ置き場を覆うことで、動物の侵入やさらなる散乱を防ぐことができる。修理が困難な場合は、速やかに業者へ修繕を依頼し、ゴミ散乱の再発を防ぐ。
③モニタリングとフォローアップを行う
清掃後はゴミ置き場を定期的に巡回し、再度の散乱や不法投棄がないかを確認する。ゴミの散乱が繰り返し発生する場合は、防犯カメラの設置やゴミ置き場の設備改修など、根本的な対策を検討する。
④入居者全体にゴミルールの周知を徹底する
ゴミ出しルールの周知を再徹底する。掲示物だけでなく、各戸へ文章でのポスティングなども行う。「収集日は当日の朝、指定時間までに出す」「前夜や深夜のゴミ出しは不可」など、入居者が実際に守るべきルールを明確に示すことが重要。外国語を母国語とする入居者が多い場合は、図解や多言語表記などの工夫が必要。
再発防止に向けた管理会社の取り組み

管理物件におけるゴミの散乱を放置すると、悪臭や景観の悪化だけでなく、不法投棄を誘発する、散乱が繰り返されるといったトラブルの要因となります。そのため、ゴミ出しルールの周知、ゴミ置き場の改善、日常的な巡回など、継続的な管理の仕組みづくりが欠かせません。
ここでは、ゴミトラブルの再発防止に向けて、管理会社が実際に取り組むべき具体的な方法を紹介します。
掲示物や収集カレンダーでルール徹底
ゴミの散乱を防ぐためには、入居者がルールを正しく理解し、日常的に意識できる環境を整えることが大切です。
そのため管理会社は、収集日や収集品目を一覧化し、入居者が一目で確認できるようにしましょう。さらに、ゴミ置き場や共用部には「収集時間」「前夜や深夜のゴミ出し禁止」など具体的なルールを掲示することで、違反の防止効果を高められます。
また、周知する内容は時期や季節に応じて更新することも必要です。たとえば、年末年始や大型連休前には大量のゴミ排出を見越した注意喚起を行います。ほかにも、夏場には臭気や害虫被害のリスクを踏まえたゴミの出し方などをあらためて促すと、トラブルの未然防止につながるでしょう。
ゴミ置き場の設備改善
ゴミの散乱を防止するためには、ゴミ置き場自体の改善も重要です。
理想は、屋根や扉を備えた密閉型のゴミ置き場を導入し、動物の侵入や臭気の拡散を防ぐことです。
その一方で、密閉型のゴミ置き場の導入には費用面の課題はもとより、容量や構造、設置場所に関する自治体のルールがハードルとなるケースもあります。そのため、すぐに切り替えられない場合はネットの固定や囲いを補強するといったことも一案です。
これらの対策に加えて、入居者数や利用頻度に見合ったゴミ置き場の容量を確保することも大切です。定期的な点検や清掃と組み合わせることで、長期的にトラブルを防ぐことができるでしょう。
ゴミ置き場を敷地内に設置するメリット・デメリット
ゴミ置き場は、自治体が道路脇などに設置する敷地外の集積所と、マンションやアパートの敷地内に設けられる専用のゴミ置き場に大別されます。
敷地内に設置するメリットの1つは、各戸からの移動距離を短縮できることです。忙しい朝や雨天時でも比較的手軽にゴミ出しができるため、入居者の満足度を高めることにつながります。さらに、管理会社や自治体のルールに沿って24時間利用を認めるなど、生活リズムに合わせた柔軟な運用も可能です。
加えて、防犯面での安心感を高められる点もメリットです。敷地内にあることで利用者が限定され、人目も届きやすいため不法投棄やトラブル防止につながります。
一方で、敷地内設置にはデメリットもあります。各戸との距離が近いため、臭いが住戸に届きやすくなる可能性があります。特に開放型のゴミ置き場の場合、風向きや地形によって臭気が広がりやすいです。
また、入居者との距離が近い分、わずかな汚れや不具合も目につきやすくなります。些細な不備でも「管理が行き届いていない」と受け取られやすく、清掃や巡回の負担が増えることもデメリットといえるでしょう。
巡回や監視カメラによる抑止
ゴミの散乱や不法投棄を防ぐためには、日常的な見回りが欠かせません。管理会社が定期的に巡回し、散乱や不法投棄がないかを確認することで、問題を早期に発見できます。また、現場をチェックしていること自体が入居者や部外者への抑止力となり、ルールの遵守を促す効果も期待できるでしょう。
一方で、ゴミのトラブルが繰り返し発生する場合は監視カメラの設置が有効です。カメラは「記録が残る」という意識からマナー違反の抑止につながり、実際に不法投棄があった際には証拠資料として活用できます。なお、設置にあたってはプライバシーへの配慮や利用目的の明示といった運用ルールを整えておくことが求められます。
入居者アプリを活用する
ゴミ出しルールや収集日の案内は、掲示板や各戸へのポスティングで周知されることが一般的です。しかし、情報の見落としや行き違いが起きやすいこと、タイムリーな発信が難しいことなどが課題となっていました。そこで昨今では、より確実で迅速な情報伝達の手段として入居者アプリの活用が注目されています。
入居者アプリを使えば、管理会社は最新のルールや注意点を即時に発信でき、入居者はスマホで手軽に確認できます。トラブル報告もアプリ経由でテキストと画像で行えるため、記録が残り、言った言わないといった行き違いの防止にもつながります。
『いい生活Home』は、不動産管理会社と入居者を直接つなぐ入居者アプリです。ゴミ出しルールやお知らせをリアルタイムに配信することが可能です。加えて、メッセージを多言語に翻訳する機能があるため、入居者それぞれが理解しやすい言語で内容を確認できます。入居者にとっては利便性と安心感が高まり、管理会社にとっては問い合わせ対応の削減や信頼性向上につなげることができます。
よくあるゴミトラブル事例と解決方法

ゴミ置き場で起きるトラブルは多種多様です。カラスや猫に荒らされて散乱するケースもあれば、入居者がルールを守らず残置ゴミが増え、悪臭や害虫の発生につながるケースもあります。
こうしたトラブルに対し、管理会社はその場しのぎではなく、原因に応じた適切な対応を段階的に行うことが求められます。ここでは、ゴミ置き場の代表的なトラブル事例と有効なアプローチについて解説します。
カラス被害を多言語周知で防止した事例
ゴミ置き場で特に起きやすいトラブルのひとつが、カラスによる被害です。収集日を過ぎて残ったゴミは荒らされやすく、中身が散乱して悪臭や景観の悪化を招きます。近隣からの苦情に発展することも少なくありません。
この場合、収集時間を守らずに出されたゴミや、指定外袋の使用によって回収されなかったゴミが放置されることが原因となることが一般的です。さらに袋の口を縛らないままゴミを出されると、被害が拡大しやすくなります。
対策としては、管理会社が入居者にルールを繰り返し周知し、必要に応じて個別に注意喚起することがポイントです。特に外国人入居者に対しては、日本語だけでなく多言語で案内することで理解不足を補い、分別や収集時間への認識を高めるようにしましょう。
日本のゴミ出しルールは自治体ごとに異なり複雑なため、外国人入居者が把握しきれずトラブルにつながるケースは少なくありません。『いい生活Home』などの入居者アプリを活用すれば、入居者の理解が深まり、カラス被害を含むさまざまなゴミトラブルの防止につながります。
注意喚起の工夫で改善した事例
ゴミが散乱する背景にはさまざまな要因がありますが、ゴミ出しルールを守らない入居者の行動がその一因となっています。
たとえば、一人暮らしを始めたばかりでルールに不慣れな入居者が多いケースや、夜勤などで生活リズムが異なり収集時間に合わせにくい入居者が多いケースです。こうした状況では収集されなかったゴミが残置され、悪臭や景観悪化の原因になりがちです。
対策としては、管理会社が掲示や周知を工夫し、入居者のルール理解を促すことが重要です。図や色分け、大きなフォントなど視認性を高める工夫に加え、ゴミの種類と収集日を示すステッカーを貼付することで、目にした瞬間にルールを思い出せる環境を整えます。こうした取り組みが、うっかり違反の防止につながります。
段階的な注意喚起で早期退去を防いだ事例
掲示や周知の工夫だけで改善しなかった場合、特定の入居者によるゴミ出しルールの違反が繰り返されるケースもあります。こういった場合でも、いきなり強い措置に踏み込むのではなく、段階を踏んで注意喚起を行うようにしましょう。
まず、掲示物や各戸へのポスティングなどによってゴミ出しルールをあらためて周知します。そのうえで、改善が見られない場合には、対象となる入居者に個別に注意を行います。
違反の状況を客観的に示すためには、収集日前に放置されたゴミ袋、口を縛らずに出された袋、指定外のゴミ袋などを写真で記録し、提示することが有効です。また、「何が悪かったのか」「どの部分を改善してほしいか」を明確に伝えることで、改善につながりやすくなります。
さらに、繰り返し違反が続く場合には契約更新時の警告や、最終的には契約解除といった強い措置を検討することも必要です。
ただし、こういった強い対応に至る前に、段階的に注意を重ねることで改善が見られるケースが大半です。段階的に注意を行うことで、入居者が改善のきっかけをつかみやすいためです。結果として、早期退去による空室リスクを避けながら、ゴミトラブルの改善を図ることができます。
ゴミ散乱への対応を強化して入居者満足と物件価値を高めよう

ゴミトラブルへの対応は、単なる清掃やルール周知にとどまりません。段階的な注意喚起や設備改善を組み合わせることで、入居者の安心感を高め、安定した物件運営へとつなげることが重要です。
また、入居者の属性が多様化するなか、掲示やポスティングといった従来の方法だけでは行き届かないケースも増えています。こうした背景から、デジタルを活用した情報共有の仕組みを導入することが効果的です。
入居者アプリの『いい生活Home』は、タイムリーな情報発信や双方向のやり取りに加え、多言語翻訳機能も備えています。これにより、ゴミ出しに関する注意喚起やトラブル報告にも柔軟に対応できます。
ゴミ散乱の対策を単なるトラブル解消にとどめず、入居者とのコミュニケーションを深める取り組みに発展させることで、物件価値のさらなる維持・向上につながります。
・執筆者

株式会社いい生活 マーケティング本部
マーケティング部
広報部
全国の不動産市場向けイベント、セミナーなどにて多数登壇、皆様のお役に立つ最新情報を発信しております。